【山田美保子のミホコは見ていた!】競輪を愛してくださった伊集院静さん

 24日、“永い旅”に出てしまわれた作家の伊集院静さんに私がもっともお目にかかった場所は競輪場だった。競馬や麻雀もお好きだったギャンブル通の伊集院さんは競輪も愛してくださったのである。

 各地の競輪場でお会いする伊集院さんは、ダンディでオシャレで品があって、いらっしゃるだけでその場が華やかになった。柔らかな物腰で、常に優しい言葉をかけてくださるのに、車券を購入する姿やモニターでレースを追う様子は闘志に溢れていらしたものだ。

 伊集院さんのお陰で競輪好きになった有名人は少なくないが、なかでも競馬の武豊騎手はその最たる存在だ。「KEIRINグランプリ」が行われる際、「坂上忍の勝たせてあげたいTV」(日本テレビ系)に武豊騎手がゲスト出演してくれることで、ファンも関係者もどれだけ誇らしいか。関係者の末席にいる私は、毎年12月30日、伊集院さんに感謝していた。

 また、女性にモテる男性の作法もたくさん見せていただいた。すごく憶えているのは、ある女性文化人に話題が及び、私がその方を「すごく美人ですよね」と言ったときのことだ。一緒に居た男性数名が色めきたった瞬間、「あれを美人とは言わないよ。そんなこと言ったら、みんな美人になってしまう」と伊集院さんがおっしゃった。私が置いてけぼりにならぬよう気遣ってくださったのだと思った。

 東海道新幹線で何度か偶然お目にかかったときも「どちらまで?」「大変ですね」など常に優しく声をかけてくださった伊集院さん。お姿を拝見できた日は、夜までウキウキが止まらないほどだった。

 「大人の流儀」シリーズで私がもっとも熟読したのは3の「別れる力」だ。「出逢えば別れは必ずやってくる。それでも出逢ったことが生きてきた証であるならば別れることも生きた証なのだろう、と。」

 未熟者ゆえ、まだその境地には至らないが、伊集院さんが綴られた同作を読み返しながら偲びたいと思う。伊集院静さん、ありがとうございました。御冥福をお祈り申し上げます。合掌。

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