宝塚歌劇団月組スター・暁千星の主演公演「ブエノスアイレスの風」が１８日、大阪・シアター・ドラマシティで開幕した。暁は今公演千秋楽の翌日に星組への組替えするため、これが月組生としての集大成を見せる舞台となる。

　同作は１９００年代半ばのブエノスアイレスが舞台。特赦により釈放された反政府ゲリラのリーダーだったニコラス（暁）とタンゴ酒場の花形ダンサー、かつての仲間リカルドらが絡み、新たな生き方を模索する物語。１９９８年に月組の紫吹淳が初演し、２００８年に柚希礼音で再演された。ドラマティックなタンゴが随所に織り込まれており、ダンスが得意なトップとして活躍した２人が、研１３と研１０で上演した。

　暁も恵まれた容姿と抜群のダンス力を武器に、早くから注目されてきた。月組でも順調に役を重ね、メインの役を多く演じてきた。今回そんな経験が十分に生かされ、スーツ姿に男役の強さと哀愁をにじませた。可愛い系だった顔立ちにも色気が漂い、得意のダンスもイサベラを演じる天紫珠李を相手に見事なタンゴを披露した。

　かつての仲間リカルドを演じた風間柚乃は、時代に取り残された焦燥感、もがいてもがいて破滅に進むさまを表現。粗暴さと狂気、ほの暗さの一方、妹への複雑な愛を感じさせる役作りとなった。

　今公演から雪組から組替えとなり月組生になった彩海せらも芝居巧者で、物語の鍵を握るチンピラのマルセーロ役で、正面から暁・風間にぶつかった。またビセンテ役の礼華はる、リリアナ役の花妃舞音も適材適所で舞台を盛り上げた。

　前日に行われたゲネプロでは「千秋楽まで全員で駆け抜けたいと思います」とあいさつ。全力疾走を誓っていた。