渡邉寧久 新真打の披露目は大忙し 10日ごと追われる引っ越し

 【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】

 春。新真打誕生で華やぐ東京の落語界。その舞台裏の一場面から、演芸沼へとご案内~いたします。

 落語協会(柳亭市馬会長)所属の4人、三遊亭律歌(42)、蝶花楼桃花(40)、柳家風柳(47)、林家はな平(37)は現在、披露目の真っただ中にいる。

 通常、落語家は身軽だ。荷物といえば高座着と手ぬぐい、扇子。それで座布団に座り、あとは芸勝負。ところが披露目となると、そうはいかない。

 落語協会の場合、まずは都内の定席寄席4軒を10日単位で40日間かけて回るが、10日ごとの楽日(=千秋楽)に、新真打は引っ越しに追われる。

 寄席の木戸(=入り口)にたなびくのぼり、高座の背景にかける後ろ幕、高座の脇に飾る名前を刻んだ木札=招木や帯などの飾り物を次の寄席に運ぶ必要があるからだ。

 例年は引っ越し業者やレンタカーを利用するが、今回ははな平師匠のおかみさん(=妻)の実家のトラックを使っているという。新真打と番頭(=新真打を助ける役目)ら一行は十数人。搬入先の通常興行が終わる夜9時過ぎに荷物を運び込む。

 荷物を下ろした後も作業は続く。高座の寸法に合わせて、後ろ幕を折り込んだりする必要が生じるからだ。ごひいき筋にいただいた後ろ幕は、それぞれ2枚~4枚。計十数枚を一枚一枚飾り付けては見映えを確認していく。

 ひと昔前は、飾り付けた後ろ幕をスケッチし、当日担当する前座に伝達していたが、今はスマホでスクショして共有するだけ。

 3月末に、新真打は上野鈴本演芸場から新宿末広亭に最初の引っ越し。すべての作業が終わったのは終電間近だったという。今月10日夜には新宿から浅草演芸ホールへ、20日には浅草から池袋演芸場へ、披露目の道具一式が都心の夜を移動する。

 池袋演芸場の楽日(4月30日)を大楽、「おおらく」と呼ぶ。その後はちょっと間をおき、5月11日~20日、東京・国立演芸場での披露目で無事お開きとなる。(演芸コラムニスト)

 ◆渡邉寧久(わたなべ・やすひさ)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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