三遊亭円丈さん逝く 新作落語の先駆者「カ・カ・カ・カ・掛布さん」金鳥のCMでも大人気

 高座を務める三遊亭円丈さん=2010年3月
 林家木久扇(左)と東日本大震災の募金を呼び掛ける=2011年4月
 弟子のたん丈(当時・前列左端)の真打ち昇進披露会見に出席した三遊亭円丈さん(後列左端)=2020年2月
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 自作の新作落語を数多く手掛けて人気を博した落語家の三遊亭円丈(さんゆうてい・えんじょう、本名大角弘=おおすみ・ひろし)さんが11月30日午後3時5分、心不全のため都内の病院で死去していたことが5日、分かった。76歳。名古屋市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は妻ユリ子(ゆりこ)さん。昨年12月23日に東京・国立演芸場で開催した、毎年恒例の「円丈百席を聴く会」が最後の高座となった。

 昨年12月23日の「円丈百席を聴く会」では元気に高座を務めた円丈さんだが、関係者らによると、今年に入って体調を崩し、長期入院。最後は眠るように息を引き取ったという。葬儀の遺影は「強情灸」の高座の姿で、ひつぎには愛用の着物や帽子、趣味で研究していたこま犬の写真などが収められた。

 総領弟子の三遊亭らん丈(62)は「まさかこんなに早く逝かれるとは」とショックを隠せず。最後に会ったのは今年の正月で、自宅を訪問した際に優しい言葉をかけられ「丸くなられたなと思いました」と振り返った。

 印象に残る教えは、人から何かいただいたりごちそうになったりした際は「三度、お礼を言え」という言葉で、「その場と、お店を出てからと、翌日と」と説明。新作落語の先駆者だが「考え方は古典的なところがあった」としのんだ。

 1964年、古典落語の名人・六代目三遊亭円生に入門。78年、真打ちに昇進して円丈を名乗った。新感覚の新作落語で人気となり、弟子ばかりでなく“円丈チルドレン”と呼ばれる後進多数に絶大な影響を与え、古典が中心だった落語界で新作の地位を引き上げた。自作の新作落語は300超。代表作に「グリコ少年」「悲しみは埼玉に向けて」などがある。また、古典にも腕を振るった。

 78年、円生の落語協会脱退に従い、自身も脱退。79年の円生死去後に復帰し、86年には騒動が題材の著書「御乱心」がベストセラーになった。2010年には七代目円生襲名に名乗りを上げ、六代目円生の孫弟子に当たる三遊亭鳳楽さんと“落語対決”に及ぶなど、話題になった。

 多芸多才で知られ、パソコンは自身でプログラムが組めるほど。81年には「恋のホワン・ホワン」で歌手デビューし、阪神・掛布雅之HLT(66)の現役時代に共演した金鳥・蚊取りマットのCMも「カ・カ・カ・カ・掛布さん」のせりふで人気を集めた。3千の神社のこま犬を調べた奇書「ザ・狛犬!コレクション」など著書も多い。

 落語の可能性を大きく広げ、新時代を開いた生涯だった。

 ◇三遊亭円丈(さんゆうてい・えんじょう)1944年12月10日、名古屋出身。63年、明大入学。64年、中退。三遊亭円生に入門、七番弟子ぬう生に。78年、真打ちに昇進し円丈に。同年、円生が落語協会を脱退して落語三遊協会を設立。86年には騒動の顛末を記した著書「御乱心」がベストセラーに。79年の円生死後、落語協会に復帰。81年、フジテレビ放送演芸大賞最優秀ホープ大賞。新作落語で頭角を現し、「グリコ少年」「ぺたりこん」など自作300本超。阪神の掛布雅之と共演した金鳥のCM、趣味のパソコンやこま犬研究でも知られた。

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