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吉村知事に「現場を見に来て」…府下の現役教師が注文…新型コロナ下の混乱

 新型コロナウイルス感染拡大にともない一斉休校となっていた全国の小中高校が緊急事態宣言の解除に伴って順次授業再開となり、約1カ月が過ぎた。3カ月も授業をできなかった教育現場にどのような変化があるのか。大阪府下の中学校に勤務する60代の女性教諭と、同じく府下の小学校に勤務する50代の男性教諭に尋ねた。吉村洋文大阪府知事の発言によって現場が混乱することもあり、知事に「現場を見に来て」などと強く要望した。

 ◇◇ ◇◇ ◇◇

 ひところは吉村知事を関西の民放で見ない日はなかった。安倍晋三首相が会見で用意された原稿を棒読みしている姿とは異なり、自分の言葉で決然と語る姿に強いリーダーシップを感じる人もいた。

 しかし、受け取る立場によってそれは異なる。

 男性教諭は「吉村さんがいろいろ発言されます。教育についても。その結果、われわれ現場に降ってわいたような混乱がやってくるんで大変なんです。トップダウンによるスピード感はあるのでしょうが弊害は皆無ではない」と話す。吉村知事のテレビでの発言を校長に尋ねても「分からない」との返事が返ってくることもある。その日の夜遅くにメールが回ってきてようやく合点がいくことも珍しくない。

 例えば吉村知事は4月中旬、学校の休校が長期に及んでいることから自宅で過ごす子どもたちを支援しようと、図書カード2000円分を配布すると表明した。

 男性教諭は同月下旬、吉村知事が民放テレビに出演してこの件について話しているのを見て「いったいどうやって生徒に配るのだろうか」と首をひねった。休校で生徒は登校していないからだ。同僚も知らない、校長に聞いても明確な答えはなかった。

 しばらくして東京の業者から府内の各学校に生徒の人数分の図書カードが直接送られてきた。教諭は「府教委経由ではなく直接でした。学校に送られてきたということは私たちに配れということ。郵送でもいいというが切手代は出ない、学校で工面してくれと。そんな予算はありません。となると私たちが生徒の家に持って行くしかない」。女性教諭も「金券だからポストに投函で済ますことはできない」。教諭によると、当初の配布期限は5月6日だった。ゴールデンウィークを「無理矢理に」休日出勤させられそうになった。交渉して後に期限は無くなった。

 当時、府教委から感染拡大防止のために「生徒や親と会ってはいけない」と指示が出ていた。それが一転「安否確認のために」と変わった。教諭は「安否確認なら電話でもできる」といぶかった。

 緊急事態宣言下、教諭たちが2000円の図書カードを配るために出歩き、生徒や保護者と会う。その過程でウイルスに感染するリスクに怯えなければならなかった。保護者も同様で、教師が自宅に来ることに不快感をあらわにするケースもあったという。

 吉村知事やその周辺はなぜ生徒への郵送方法やそれに含まれる代金も含めて立案しなかったのか疑問が残った。男性教諭は「本当に無計画だったとしか言いようがない」と振り返った。「吉村知事の人気取りのパフォーマンスだ」との批判もあったという。

 新型コロナウイルスの影響で、授業再開後の教育現場の労働環境はより厳しくなった。

 一日の授業が終わると教室内をアルコールで消毒する。作業するのは教諭だ。机、いす、子供たちが触れたところ、触れそうなところをすべて除菌しなければならない。しかし、業務はまだまだ残っている。明日の授業の準備、学校として取り組んでいる「研究」のための課題、修学旅行はいったいどうなるのか、やるならやるで下見の必要がある、保護者への対応もしなければならない。

 あれこれ考えていると自然と消毒作業がおろそかになる。女性教諭は「これで子供たちの健康を守ることができるのか。専門業者に依頼すべきではないのか」との考えがよぎったことを明かした。

 女性教諭は「かつてはもう少し現場に余裕があった」と振り返る。余裕がなくなった原因のひとつとして2007年から始まった「全国学力テスト」、さらに15年から始まった大阪独自の統一学力調査「チャレンジテスト」をあげた。

 大阪市のホームページには「学力向上において成果を挙げた教員に報いる方策」とし、「課題整理の上、教育委員会において人事評価・給与等への反映方策を検討」とあり、これらテストの結果も踏まえて給与に反映されることが明記されている。

 橋下徹氏が知事に就任したのが2008年。以後、維新が府政、市政のトップという状況が続く。教育現場における変化として教諭は「テストの点数を巡って学校同士を競争させている」「政治が管理、統制を強めて教育支配、教職員統制を強めている」と疑問視した。

 吉村知事は維新の知事として3人目。教諭は、決断から実行までのスピードを認めつつもトップダウンの姿勢に不安を感じる教員が増えてきていると指摘。「同じトップダウンでやるなら教師の数を増やして受け持つ子供の数を減らしてほしい。40人から35人、いや、39人にするだけで子供への目配りが全く違う。教室の数そのものにも余裕がない現状では、第2波が来て子供たちを分けるにも物理的な余裕がない。現在、すでに密な状況になっている。そういう意味では知事に現場を見に来て欲しい」と訴えた。

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