伊藤銀次インタビュー(前)新作では「生きていく上で一番大切なものを歌いたい」

 シンガー・ソングライターの伊藤銀次(69)が昨年12月、ハーフアルバム「RAINBOW CHASER」をリリースした。「オレたちひょうきん族」のテーマ曲「ダウンタウン」の作詞家、「笑っていいとも!」のテーマ曲「ウキウキWatching」の作曲家で、プロデューサーとしてはウルフルズをスターダムにのし上げるなど、Jポップのキーパーソンとして活躍してきた伊藤が新作を語るインタビュー、その前編。

  ◇  ◇

 2年ぶりのリリースに、伊藤は「現役で活動してるんだっていうことをはっきり意味づけてくれるのは、その時その時のリリース」と、現役感へのこだわりをのぞかせた。

 とはいえCDの売れないご時世。新作を出すにあたり「この(伊藤銀次の)テイストをものすごく好いてくれた人たちに絶対買ってもらうために、というやり方しかない」と判断し、「アルバムを作る時に初めて、Jポップ的な考え方を全部やめよう」と決めた。指針になったのは、ソロデビューアルバムで近年、再評価が著しい「デッドリィ・ドライブ」(1977年)だ。

 再評価の理由を「当時の若者たちが洋楽を聴いた時に感じたロマンチックなもの、歌詞だけじゃなくてサウンドも含めた世界観みたいなものがたぶんまた評価されてる」と分析。「70年代の、まだみんなが模索してた頃のAORですよね。日本の、シティポップスと言われる。そこに戻ってみよう」と、本作に取りかかった。

 モチベーションは次のようなものだ。

 「僕らぐらいの年齢になってくると、現実的な経験値も増えてきてるので、どうしてもロマンが足りなくなる。僕は常にロマンチックな、現実とはちょっと違う、ディズニーランドに近いような夢のある世界が好きでね。思い切りロマンチックなものを、今の時代とは違うものを作りたいと、以前よりも強く思って作りました。特に自分が生きていく上で一番大切なものを歌いたいなと、今回のアルバムを考えた」

 タイトル曲「RAINBOW CHASER」は「自分の歌」だという。

 「ビートルズに出会って、楽器も弾けなかったのが、ギターが練習したくなって練習して、何年かたったらプロになって、たくさんの作品を発表できた。色んな人にも会えましたし。音楽ってすごいなっていう、常に自分で思ってたのを歌にしたいなと思って。ちょっと大仰な、ミュージカルの主題歌のような感じで作れたらいいなと思って」

 詞に出てくる「あの曲」とはビートルズの「プリーズ・ミスター・ポストマン」のことだが、具体的な曲名は出していない。

 「あえて書かなかったのは、『RAINBOW CHASER』は僕の歌でもあるけど、このアルバムを聴く人たちも自分のレインボーを追いかけてるかもしれない。そこには自分の曲をはめ込んで聴いていただければいいなと思ったので、そこは全部『あの』っていう形にした」

 「RAINBOW CHASER」の仮題は「フィラデルフィア」で、「フィラデルフィアソウルみたいな、70年代のソウルをやりたかった」という。

 近年、ソウル音楽に再びはまっており、その理由を「常にエンターテインメントに長けてる、お客さんを喜ばせよう、踊ってもらおう、楽しんでもらおうというのがすごくピンと来ていて」と説明。「伊藤銀次なりのソウルフルなアルバム、うんとロマンチックなアルバムを作りたいな」との思いで、歌詞も「思いっきりウソだろう、そんなことないだろうみたいな歌詞を、あえてそちらへ突っ込んで」行ったという。

 ビートルズの原点の一つにモータウンなどのソウル音楽もあり、「そこに自分の原点があるんだなと思って。僕なりのソウルミュージックを原点に帰って作ってみたいなっていうのが、今回の『RAINBOW CHASER』の立ち位置でしたね」と明かした。(続く)

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