東京地検特捜部は２５日、日本でのカジノを含む統合型リゾート施設（ＩＲ）事業への参入を目指していた中国企業「５００ドットコム」側から、現金３００万円や約７０万円相当の利益供与を受けたとして、収賄容疑で衆院議員秋元司容疑者（４８）＝東京１５区＝を逮捕した。秋元容疑者は２０１７年８月から１８年１０月まで内閣府副大臣でＩＲを担当し、観光施策を所管する国土交通副大臣も兼務。２５日に自民党を離党した。中国企業を巡る外為法違反事件は、政界の汚職事件へと発展した。

　９年１１カ月ぶりの現職国会議員の逮捕者となった秋元容疑者は２５日、「事実無根」と強気の姿勢を崩さず、逮捕直前に「不正には一切関与しておりません」とツイートした。

　特捜部はこの日、千葉県印西市にある自民党の白須賀貴樹衆院議員（４４）＝千葉１３区＝の地元事務所、宮城県石巻市にある自民党の勝沼栄明前衆院議員（４５）の事務所も家宅捜索した。２人は１７年１２月、秋元容疑者と共に広東省にある５００社の本社を訪れていた。

　特捜部は、贈賄容疑で５００社の副社長の肩書で活動していた鄭希容疑者（３７）、同社顧問だった紺野昌彦（４８）、仲里勝憲（４７）両容疑者も逮捕した。関係者によると、一部は容疑を認めている。

　秋元容疑者の逮捕容疑は、ＩＲ事業に便宜を図ってほしいとの趣旨と知りながら、鄭容疑者らから１７年９月下旬頃、東京都内で現金３００万円を受け取った他、１８年２月中旬頃には、北海道留寿都村への旅行の招待を受け、旅費など約７０万円相当の利益供与を受けた疑い。

　５００社は広東省に本社を置き、オンラインカジノなどの事業を手掛け、１７年７月に都内に日本法人を設立。留寿都村が誘致していたＩＲ事業への参入に意欲を見せていた。秋元容疑者は同８月、那覇市で５００社が開いたＩＲに関するシンポジウムに登壇。同１２月に本社で経営トップと面会していた。

　ＩＲを巡っては、経済効果や地域振興への期待がある一方、風紀の乱れや依存症への懸念が根強い。外資系事業者の参入も、国内資産流出の恐れがあるとして、規制を求める声が出ていた。

　しかし、政府与党はこれらの問題の解決策を十分に示すことなく、法整備を強引に進めた。秋元容疑者自身、ＩＲ整備推進法案が審議された２０１６年臨時国会では衆院内閣委員長としてスピード可決を主導している。

　カジノに詳しい聖学院大大学院柴田武男講師は「あまりにもうかるから、まともな方法でなくても参入したいと思うのがカジノ利権。もうかるのは業者であり、誘致した地元に金が落ちるというのは誤解だ。この事件を通じて気付いてもらいたい」と指摘した。