八千草薫さん逝く 生涯現役貫き世代を超え日本中から愛された名女優

 「やすらぎの刻~道」の八千草薫さん=テレビ朝日提供
八千草薫さん
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 かれんで上品な雰囲気で親しまれ、テレビドラマ「岸辺のアルバム」をはじめ映画、舞台と幅広く活躍した女優の八千草薫(やちぐさ・かおる、本名谷口瞳=たにぐち・ひとみ)さんが24日午前7時45分、すい臓がんのため東京都内の病院で死去した。88歳。大阪市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。今年2月にがんを公表、治療に専念していた。

 突然の別れだった。

 八千草さんは2017年春に乳がんの手術を受けた。同年12月にすい臓がんと診断され翌18年1月に手術ですい臓を全摘出。仕事に復帰したが今年1月中旬、肝臓への転移が発覚した。治療に専念するため、テレビ朝日系ドラマ「やすらぎの刻~道」のヒロインを2月に降板(前作「やすらぎの郷」からの“姫”役は続投)したが、「帰って参ります」と、復帰を誓っていた。

 所属事務所関係者と都内の自宅で取材対応したお手伝いさんの話を総合すると、入退院を繰り返しつつも、6月には北海道の富良野に出掛けるなど元気だった。最後になった入院は2日頃から。亡くなる前日の23日も、お手伝いさんが作ったマツタケご飯を「今日のお食事おいしいわ」と食べ、「明日はヒラメのお造りが食べたいわ」と望むなど、普段通り過ごしていた。

 「秋頃になったら、何かできることがあるんじゃないか」と復帰に意欲を燃やし、「オリンピックまで頑張るわ」と東京五輪を楽しみにしていたが、24日午前6時半過ぎに容体が急変。29日の夫・谷口千吉監督の十三回忌を前に、力尽きた。

 宝塚では清純派の娘役として活躍。映画では54年の「宮本武蔵」のお通役などでのかれんさで人気を集めた。

 退団後は良妻賢母役が多かったが、ドラマ「岸辺のアルバム」(77年)の不倫妻役でイメージを覆した。一度は出演を断ったが脚本の山田太一氏に「本気で人を好きになればいい」と背中を押され、代表作となった。ドラマ「阿修羅のごとく」(79、80年)では夫の浮気に悩む妻を好演。今夏発売の著書「まあまあふうふう」では好きな作品、思い出に残っている作品に「岸辺-」とドラマ「うちのホンカン」を挙げた。

 晩年も精力的で、2015年に映画「ゆずり葉の頃」に主演。17年にはドラマ「やすらぎの郷」で戦前からの大スター役を好演し、18年には舞台「黄昏」に出演した。

 最後の仕事は5月26日に千葉県内で行われた、理事を務める日本生態系協会のイベント。最後の出演は「やすらぎの刻」で、所属事務所によれば、まだ放送されていない出演シーンもあるという。

 前掲書では「それもこれもみんな一緒にして『幸せだったなぁ』と思います」と、人生を振り返っていた八千草さん。皆の中にも幸せな記憶を残して、旅立っていった。

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