ドレスコーズ 新作を語る(前)「ジャズ」は「人類最後の世代として書くべきこと」

 平成から令和に改元された5月1日、「人類最後の音楽」と銘打ったドレスコーズのコンセプトアルバム「ジャズ」がリリースされた。新時代の幕開けに、人類の終わりについての音楽を鳴らしてみせたドレスコーズ=志磨遼平の企図したものを探るインタビュー、その前編。

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 「でっどえんど」、「エリ・エリ・ラマ・サバクタニ」、「銃・病原菌・鉄」、「もろびとほろびて」、「プロメテウスのばか」-曲名だけでも人類とその歴史、文明への終末感が濃厚に漂う。滅びのコンセプトアルバムを新時代到来に沸く日本にドロップすることを、志磨は「すごく自然なこと」という。

 「何ももうすぐ世界が終わるっていうようなことじゃなくて」と断り、改元や2020年の東京五輪、2025年の大阪万博などが続く「時代の変わり目にしか作れないものがきっとある」、「その空気の中で作れるものを、今のうちに作っておこう」と思い立ったことを明かした。

 志磨は東京五輪~大阪万博という流れが1964~70年にもあったことを指摘し、「あの時の夢よもう一度という感じが、果たしてあの頃みたいに盛り上がれるのかしら、それは分からない。時代の転換期みたいな空気の中には、どうしても一抹の不安みたいなものもある」と疑う。

 「でもそれをあんまり言うようなものではないですねえって。きっと僕らももうダメだよってことを言うべきではないし、またいい時代が来るかもしれないねえっていうふうにやり過ごすんですけど、果たしてそうかな?って思ってしまいますよね。あの頃のように大きく成長することはないのかもしれない。緩やかに坂を下ってるのかもしれない。それがたぶん、こういうコンセプトに至るとっかかりではあった」

 格差社会、少子高齢化、世界や社会の分断…五輪や万博があるからといって、楽観的になれるのがむしろ不思議というものだ。一方で終末テーマとはいえ、歌詞からは人類や世界、文明に対して、辛辣ながらも温かみや優しさが伝わってくる。

 「もう少し俯瞰的に自分たちの歴史みたいなものを眺めた時に、今生きてる時代がどんだけおかしな時代かっていうのはすごくよく分かるようになって。この100年くらいの狂乱、狂騒というか、豊かだし贅沢だし、クレイジーだし、人間って面白いし、かわいらしいというか、おかしみもあるし、面白いな人間はってよく思う。僕はたぶん、人間の生きざまみたいなものをずっと作品のテーマにしてきたように思う」

 「その歴史が終わるとして、自分たちが愛すべき人類の最後の世代かもしれないとなると、最後の世代として書くべきことってあるかなと思った。パーソナルなこと、シンガー・ソングライター的な、内省的なもの、自分の体験みたいなもの、怒りでも悲しみでも恋愛感情でも、そういうものをテーマにしてる場合じゃないなって思った。自分のことなんかよりも書くべきことあるぞ今と思って」

 通常盤のDVDでは、人類が別の種に進化するという、滅亡の先も提示されている。

 「このアルバムをすごい先の誰かが聴いて理解しようとして。その頃にはドレスコーズの志磨亮平がいて、という情報なんかなんの意味も持たない。この頃の人、みたいなすごい曖昧な認識になるというか。未来の人から見たら、当時の人類の一人がこういう音楽をなんとなく録音していて、へえ、この頃の人類ってこういう音楽を演奏したり歌ったりしていて、こういう思想を持ってたのねとか、そういうものを作ろうと思ったんですね」(中編に続く)

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 【ツアー日程】

 ◇6月6日=東京キネマ倶楽部

 ◇6月9日=札幌 cube garden

 ◇6月15日=仙台 SENDAI CLUB JUNK BOX

 ◇6月16日=新潟 GOLDEN PIGS BLACJ

 ◇6月22日=福岡 BEAT STATION

 ◇6月23日=岡山 YEBISU YA PRO

 ◇6月29日=大阪 BIG CAT

 ◇6月30日=名古屋 CLUB QUATTRO

 ◇7月6日=横浜 BAY HALL

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