Abemaの哲学【2】元朝青龍氏の“出たい”にも応える「もう1回だけ相撲を…」

 藤田晋社長が率いる、インターネット動画配信サービス「AbemaTV」が4月11日で3周年を迎える。18年度の先行投資額が約208億円と大きなコストがかかってはいるが、十代を中心とした若い世代に反響を呼んでいる恋愛リアリティーショーのようなヒット企画も出てきているという。谷口達彦制作局長とのインタビュー全2回の2回目は、出演者に“出たい”と思ってもらえる番組づくりについてまとめた。

 これまでに話題となった番組の1つに亀田興毅、大毅の兄弟や元朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏が挑んだ「勝ったら1000万円」シリーズがある。開局3周年にあわせ、谷口局長が「すごく盛り上がるといいと思います」と期待するのが5月1日放送予定の「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」。キックボクシングの“神童”と呼ばれ、昨年大みそかに元ボクシング5階級王者のフロイド・メイウェザージュニアと対戦した、あの那須川が登場する。

 この手の企画で最も重要になるのはマッチメーク。各報道を通じてボクシング経験者を中心に各方面から挑戦状が届いている。3月26日に行ったこのインタビュー時点では、「正直言うと、まだ決まっていないんですよね」としていたが、「本気の勝負は絶対にやりたいと思っているので、視聴者が熱狂するベストバウトは絶対につくる」と自信を見せていた。

 元朝青龍氏の企画では、谷口局長自らが交渉役になって、企画実現に奔走したという。モンゴルに出向き、「横綱!もう1回相撲をやりませんか」と呼びかけて、胸に眠る相撲への愛を揺さぶった。後日談として谷口局長が同氏の思いを代弁する。

 「ドルジ(自分自身)を見ているんですって。幽体離脱して(いるイメージで)。そういうシーンが何度も何度もそんな夜があったらしくて、そういう未練が(あった)。もう1回だけ大好きな相撲をとって、晴れやかな笑顔になりたいっていう」

 谷口局長に言わせると、自身が口説いたというよりも、「もう1回だけ相撲がしたい、その気持ちだけだった」という願いの受け皿に番組がなったのだという。

 こうした“番組に出たい”という出演者の受け皿になりうるのもAbemaTVの特徴かもしれない。現在放送されているレギュラー番組では、恋愛リアリティーショーが人気ジャンルになっている。代表作の一つに「オオカミくんには騙されない」シリーズがある。男女数人があるシチュエーションで共同生活をし、恋愛を育む…とここまではよくある企画だが、男性陣に絶対に恋愛対象にならないという役割を持った「オオカミくん」がいるため、推理ゲーム的要素も含まれている。

 谷口局長によると、出演希望者の中には、番組内でどのような役割を演じるのに向いているか自己分析している人もいるという。「モデル経験があるからオオカミとか、私は地域性を生かして、隣のクラスにいるかわいい子(の立ち位置)とか」。こうした十代を中心にした若い出演者に“出たい”と思われる番組をつくっているのも特徴だ。

 番組づくりは地上波テレビでは年代ごとにマーケティングされがちだが、「その人たちにとって見たいものをつくる」という狙いがある。谷口局長も「ごまかしたり、他の世代向けにデフォルメしたりしないという。現象とか潮流ですよね、それを直接突き刺すっていうか、そういう番組を心がけていて」と言葉に力をこめた。

 報道部門でも直近ではイチロー選手の現役引退会見のように、いつ始まるか、またいつまでやるのか分からない深夜の出来事にも対応して生配信した。谷口局長は「報道をディスる(批判する)つもりは一切ないです」と前置きした上で、「今のインターネット世代には、咀嚼(そしゃく)されているものというよりは生のもの、リアリティーのあるものを見たいという欲求が全体的にあって。そういうところの欲求をすごく満たしているなというのはありますよね」と分析している。

 “見たい”ものを見せ、“出たい”と思われるものをつくる。収益化という企業として当然の課題を抱えながらも、AbemaTVは4年目も挑戦を続ける。

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