藤井四段 前人未到、デビュー以来無傷最多更新 14歳が開いた棋界新時代

感想戦を行う藤井聡太四段(左)=東京都渋谷区・将棋会館(撮影・棚橋慶太)
29連勝を達成しガッツポーズする藤井聡太四段=東京都渋谷区・将棋会館(撮影・棚橋慶太)
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 最年少プロ棋士の藤井聡太四段(14)が26日、都内の将棋会館で行われた竜王戦決勝トーナメント1回戦で増田康宏四段(19)を91手で破り、デビュー以来の連勝を「29」に伸ばし、歴代最多連勝記録の単独1位に躍り出た。終局後、日本将棋連盟の佐藤康光会長(47)と並んで会見した藤井四段は「想像もできなかったことで、喜びとともに非常に驚いています」とこれまでの歩みをかみしめた。

 天才中学生が金字塔を打ち立てた。「単独1位になれたということは、特別な感慨というか、今までとは違った喜びがあります」。30年前に神谷広志八段(56)が樹立し、「不動の記録」と称えられていた28連勝を無キズのまま塗り替えた。

 160人いる棋士の中で、2人しかいない十代対決を制した。藤井四段は前日から都内に滞在しており、午前9時半過ぎに車で会館入り。やや緊張した面持ちで対局室に入ると、じっと下を向いて目を閉じたまま対局開始まで考え込んだ。

 午前10時から始まった対局は持ち時間各5時間、藤井四段が先手で臨んだ。夕食休憩前には増田四段にペースを握られる局面もあったが、終盤で巻き返し、桂馬を急所に打ち込むなどし、優勢を築いた。その後は持ち前の読みの鋭さで押し切った。勝負は11時間半で決した。

 初戦からわずか約半年で新記録までたどりついた。藤井四段はパソコンソフトを駆使し、気になる手や序盤を研究する一方で、大山康晴十五世名人など昭和の大名人の棋譜なども読みあさった。師匠の杉本昌隆七段(47)は「僕らでもあまりやらないやり方。両極端な方法を採り入れる。良いものを採り入れる吸収の仕方がうまい」と舌を巻く。

 詰め将棋で鍛えた鋭い寄せや、急所の見極めについては「教えられて身につくものでもないし、持って生まれたものとしか言えない」と天賦(てんぷ)の才を認める。この日対局した増田四段の師匠・森下卓九段も「将棋の完成度が極めて高い。短所が見つからない」とうなった。

 偉業を成し遂げても冷静だった。神谷八段は当時自身が単独1位記録に臨んだ際の心境を「プレッシャーが大きかった」と語ったが、藤井四段も「これだけ注目していただいてプレッシャーはありました。けど、重圧に押しつぶされては良くないのでなるべく自然体で指すように心がけました」と振り返った。

 この日は50社150人の報道陣が詰めかけて会館前はごったがえし、警察が出動する一幕もあった。連盟関係者によると、同会館にこれほどの報道陣が詰めかけたのは初。95年から96年にかけて、羽生善治三冠(46)が七冠独占したときの盛り上がりを上回っていると話す関係者も多い。

 史上最年少のタイトル獲得を期待する声も大きくなってきた。次回は7月2日に竜王戦決勝トーナメントの2回戦で佐々木勇気五段(22)と対局する。さらなる高みを目指す14歳は「実力を高めてタイトルを狙う棋士になりたいと思っています」と力強く言い切った。

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