俳優の仲代達矢（８３）が１３日、都内で行われた映画「七人の侍」（１９５４年）の４Ｋデジタルリマスター版試写会に登場し、巨匠・黒澤明監督の思い出を、多くの黒澤作品でスクリプター（記録係）などを務めた野上照代さん（８９）と共に語った。４Ｋ－版は「午前十時の映画祭７」で１０月８日から、全国の５５劇場で公開される。

　仲代は当時１９歳、登場時間わずか２秒のセリフもないチョイ役で記念すべき映画デビューを果たした。

　「生まれて初めてチョンマゲ着けて、刀を差してチョコチョコ歩いたら、監督が『なんだあの歩き方は！？』って。朝９時から２００人くらい待たせて『しょうがない。ＯＫ』と言われたのが午後３時。役者は歩き方だな、と思いました」と、原点を振り返った。

　上映時間２０７分の超大作「七人の侍」は、オリジナルのネガフィルムを発見できず、マスターポジとディープネガの２種類のフィルム、計４０巻、全２９万７４０７コマを、１コマずつ修正。映像だけでなく、聞き取りづらかった音声も、ノイズを消すなどして鮮明になった。

　「羅生門」（５０年）以降、黒澤組には欠かせない存在だった野上さんは「泣いちゃった。黒澤さんや（主演の）三船ちゃん（敏郎さん）に見せてあげたい。喜ぶよ」と感慨深げ。「三船ちゃんはセリフがわかんないって評判悪くてね。彼が叫ぶところなんて、本当にわかんなかったもん」と、デジタル技術の進歩に目を見張った。

　撮影は１年に渡り、当時で２億２千万円もの製作費がかかった、世界の映画史にさんぜんと輝く金字塔。野上さんは「普通の映画が２千何百万だった時代。黒澤さん、４４歳ですからね。（後に黒澤監督は）『俺だって、あんなの撮れないよ』と言ってました」と、目を細めていた。