全英オープン総括 敗れて強しスピース

 1930年のボビー・ジョーンズ以来、3連続メジャータイトル制覇がかかった21歳のジョーダン・スピースは、期待通り最終日18番ホールアウトまで目が離せない素晴らしいプレーを見せてくれました。

 スピースを中心に5日間のドラマは今までにない「The Open」の見どころ満載でした。全英は、他のトーナメントと何が違うのか?。「セントアンドリュースは、悪天候の中でのラウンドでこそうまさが出る!」というのは、今年65歳でこのコース、試合に別れを告げたトム・ワトソンの言葉。その言葉の意味を今回の全英で十分に納得させられました。

 狂風?強風!。スピース、ダスティン・ジョンソンのグループの中で堂々と渡り合っている松山選手を見て誇らしく感じた初日。

 2日目の3人は、天候に振り回されて2回も中断され17時間がかりの18ホールとなった。強風でパターが動く中、見事に?全員ショートパットを外していました。パターグリップは柔らかく握ってストロークをするので、風によってシャフトまで揺れるのです。

 スピースもこのあたりから、弱気なパットで調子が狂ったかな?と思いきや、翌日には、いつもの積極的なパットに戻すマインドコントロールが凄い!パットがショートになると大げさなフォローの振りをしてストレスを解消しているのも、スピースの強いメンタルを支えている要素なのかもしれません。

 いかに強風がプレーに影響するか?。ショットでもパッティングでも、風の方向が時によって変化し、追い風、向かい風、横風の中で、どこを狙い、どんな弾道で打つか。そして、正しいクラブ選択が出来ること…それが全英で勝てるプロの必要条件なのです。もちろんロングアイアンのパンチショットも、全英ならではの光景かもしれません。

 パー5が向かい風になると“800ヤード”に。午前、午後でパー3でのクラブがピッチングウエッジから7番アイアンに変わり、横風で45ヤード流れるのですから、幅100ヤードのワイドグリーンも納得です。ですから、全英のパーオン率はかなり高いのです。が、難しい長~いパットが残り、かと言って積極的にピンそばを狙うと難しい寄せ、パットが必要となるのです。

 3日目は、好天気でしたが、こんなにグリーンが簡単だった?と感じるほどどの選手もバーディーを連発。オーバーパーでラウンドした選手は数えるほどしかいなかったのです。なるほど…風のない全英は簡単で、面白くないのでした。

 小差の中に十人以上がひしめき合って迎えた最終ラウンド。天候に応じて、高弾道でピンそばにピタっと止める。あるいは、ピッチでグリーンのうねりを読みながら寄せる。上げて寄せるか、転がして寄せるか…どの選手も多種多様の技を見せてくれました。

 3人のプレーオフに、特別なロングヒッターはいなくても、優勝したザック・ジョンソンはパターとウエッジの名手で、惜しくも敗れたルイ・ウーストハウゼンも見事なべタピンを何度も見せてくれました。やはり“寄せ、パットがスコアメークのカギ”でした。

 今回、惜しくも3連続メジャータイトル制覇はなりませんでしたが、スピースの強さは、技術面のみならず、マインドコントロールが素晴らしいことにあります。勝ちたい、勝たねばならない、負けたくない!賞金が欲しい!どれも考えてはいけないことで、考えることはただ一つ。自分の次のショット、自分のゲームだけを考えてプレーをすること。これからもスピースからは、目が離せません。

 (USLPGAインストラクター・今井貞美)

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