マスターズの裏側~プロの練習に注目

 出無精の私は、今回がマスターズ観戦初体験でした。マスターズは入場券が手に入りにくい試合ですが、USPGAメンバーやLPGAのインストラクターらには何日間でも無料で入れる資格があります。もしあなたがUSAのティーチングプロを目指すなら、覚えておいて下さい。

 このオーガスタは、人混みが嫌いな私が居心地良く過ごせた場所でもあります。練習場には観覧席もあり400ヤードほどの奥行と打席数が25くらいあるドライビングレンジ、レンジの中には75ヤード、150ヤード(ピッチングウエッジ用?)や180ヤード(7番アイアン用?)にそれぞれバンカーが付いたグリーンがあり、両端には280ヤードから310ヤードの間にそれぞれ2つのバンカーが。この距離がプロたちのアイアンやドライバー平均飛距離なのです。

 レンジの左側はパターグリーン、バンカーが付いた寄せの練習施設が2カ所、レンジの右サイドに緩やかな上り傾斜に10ヤードごとに白い旗がさしてあります。目に染入る緑の美しい完ぺきな練習場。

 プロの中でも選ばれたプロたちだけが参加するマスターズ。次から次へ歴代の優勝者や世界からアマチュア優勝者など素晴らしい選手たちが練習にやって来る光景は、私は今までにない特別な興奮を感じました。

 松山選手のウオーミングアップは2日間見ることができ、ボールの方向性が良いので結構いけるのではと期待しました。そんな私の想像は、結果は優勝こそしなかったけれど、世界の強豪のなかで素晴らしい成績を残し来年もまたここでその姿を見られる約束をしたのですから嬉しい限りです。来年は日本人初のマスターズ優勝を果たして下さい!!アマで優勝(ローアマ)したのですから、2冠にしましょう!

 松山のウオーミングアップは、右手だけでクラブを握りテークバック、フォローが半分でボールを軽く打つというよりクラブの重さを感じながら半振り。フォロースルー時のクラブフェースの面がリリースされているのが確認できます。片手で行うのは体、腰の回転でスイングを行い、手打ちになりやすい手、腕や上半身の力を抜きクラブに仕事をさせている感覚でしょうか。

 次は、右端の白い旗に向かって距離の変化と方向性確認のアプローチショット…。練習。松山はウエッジのフェースを変えずテークバック、インパクト、フォロースルーまでストレートイン。そしてアウトのサイドスピンのかからない方向性の良い打ち方をしていました。これが今のアプローチのやり方。ピンに向かって、真っすぐに行くので、チップインやベタピンがラッキーではなくできるのです。

 サイドスピンやバックスピンが最高の技術と、もてはやされた時代は終わり、バックスピンをかけなければならない状況以外、バックスピンをかけないような寄せが主流になっています。で、ターフを取らない寄せをほとんどの選手がしています。地面の柔らかさやウエッジの入り方でどのくらいバックスピンがかかるか予想しにくいスピンは避けたいところ。

 ウエッジを開いてカットに入れていく右スピンのかかるボールも必要な時以外はしないマイナーな打ち方。右スピンで寄せたチップインの確率は低い!のです。ほとんどはスクエアでサイドスピンのかからないショットで、ピンに向かって転がって行く寄せが今流といえます。

 優勝したジョーダン・スピースは20ヤードほどの短い寄せやパットはプロのなかで一番のうまさと評判でした。今回も見事な腕を見せつけてくれました。そんな現実が、辛抱強く、地味な寄せの練習を黙々としているようなタイプに見えるのだと思います。

 マスターズに参加している選手たちは、だれもが寄せの上手さが素晴らしいからマスターズにいるわけで、寄せの練習が嫌いな人は勝てるプロにはなれない!と私は信じています。

 さて、ロングヒッターのダスティン・ジョンソン、彼の練習を1時間ほど見ました。なぜ、興味があったかというと、彼のクラブフェースがクローズでありながら、なぜあのように飛ぶのか?手首を痛めないのか?時々、左に曲がるのか?そういえば横にブッチ・ハーモンが付いていました。ゴルフスイングはこれがベストというのはないので、要するに結果さえ出せば良く、体型や筋力、バネなど個性があるので教える側は飽きません。

 結果とは、もちろんスコアで体に支障が出ないスイングを何回も繰り返しできる動きがその人のスイングとなるのです。ババ・ワトソンは、自己流のスイングでメジャーも取っているロングヒッターの1人ですが、できればやらない方が良い!と思えるような悪い例の全てを凝縮したようなスイングですが、結果は素晴らしい。ゴルフスイングは本当に面白い。

 練習を見ている間、隣の席に少年が座りました。ゴルフの話をしているうちに、彼は何とダスティン・ジョンソンの義理の弟でした。14歳でゴルフ歴2年。ダスティンが義兄になってゴルフを始めて、ジュニアの試合では最初96、現在73のスコアが出ているそうです。やはりダスティンの強い影響を受け、自分も将来マスターズに出る!との夢を持っています。ダスティンがいれば毎日一緒にラウンドしているとの事。プロを目指す少年たちにマスターズを見せたいと思いました。夢に向かって大きなパワーになること間違いなしだからです。

 話をダスティンのスイングに戻しましょう。確かによく飛びますがやはり飛ぶ人は方向が少し暴れるので、かなり打ち込んでいました。深くターフをとらないように鈍角にクラブが入るように打っていました。しかし、時々、左に曲がる弾道も見えていて、あのシャットのクラブフェースの特徴がたまに出るのではと感じました。

 ダスティンの隣でイアン・ポールターが2本のスティックをTのように置き、ボールを打っていました。ボールにサイドスピンがかかるか、方向が悪いか?いずれにしても、このスティックでアドレス時の正しい立ち方を作れば修正できる便利な方法です。スティックはうまいゴルファーのほとんどが使っていて、正しい練習をする必需品なのです。

 練習場は、世界の頂点を狙うプロが、試合で見せる技術を高めたり、これを維持する努力や苦労を知ることもできるとても興味深い場所でもあります。みなさんも、ぜひ、一度プロの練習をじっくり見て下さい。(USLPGAインストラクター・今井貞美)

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