琴勝峰を育てた父・手計学さん 身長190センチ体重167キロ、語った恵まれた体格の礎 ボディービルダー的体づくり
「大相撲名古屋場所・千秋楽」(27日、IGアリーナ)
琴勝峰が1差で追っていた安青錦を引き落とし、13勝2敗で初優勝を果たした。2023年初場所千秋楽、貴景勝との優勝を懸けた相星決戦に臨んだホープで、ケガの影響で十両に転落するなど停滞していたが一気に飛躍。昨年春場所の尊富士以来8場所ぶりの平幕優勝で、殊勲賞と敢闘賞とともにIGアリーナ初代王者に輝いた。
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身長190センチ、体重167キロ。横綱や他の幕内力士にも引けを取らない琴勝峰の体格は、育ってきた家庭環境に礎があった。父の手計(てばかり)学さん(60)は千葉県柏市で居酒屋を営み、ボディービルが趣味。体を大きく強くするということにたけている父の下、ボディービルダー的な創意工夫で、幕内琴栄峰を含めた兄弟ふたりを幼い頃から体作りで支えてきた。
琴勝峰が幼少期だった2000年代前半。息子2人を大きくするために父は奔走した。インターネットの普及が今よりも盛んではない時代だ。さまざまな本を読みあさり、調べていくうちに分かったことがあった。
「第2次成長期までに何センチ伸ばせるかが勝負だと分かって。うまくやれば父親の(身長)プラス10センチまでいけるという文献があった」
学さん自身は身長177センチで、日本人の平均を上回る体格。それ以上を目指して、食事、栄養の吸収、トレーニング法などさまざまな工夫を凝らした。
まずは栄養面。ボディービルダーらしく、タンパク質重視の食事が中心だった。肉はもちろんのこと、居酒屋経営の仕事柄、毎日市場に足を運んで新鮮な魚を買い入れ、手計家の食卓にはいつもたくさんのおかずが並んだ。「何しろ量は結構食べていた」。多いときは肉だけで一食2キロを平らげたという。
食事の時間にも気を使った。夕食は必ず日課の四股を踏んでから。「当時から“ゴールデンタイム”というのがあった。トレーニング後はタンパク質の吸収が少し良いという話だったので」。今では広く知られているトレーニング後の30分から1時間後の食事で、効率的に栄養を吸収した。
トレーニングはあくまで“自然な成長”を方針にした。自分の体重を負荷として行う自重トレーニングのみで器具は使わない。「これも当時の文献で18歳ぐらいまでは自重より重い負荷を掛けると、子どもの成長を止めちゃうとあって」と、四股や腕立てなどが基本のメニュー。階段の手すりにタオルを引っかけ、それを引っ張って筋肉の引く力を高める『斜め懸垂』というトレーニングでは、力の強さの余り、手すりを破壊してしまうこともあった。
中学入学時には170センチだった身長が、卒業時には186センチまで一気に伸びた。学さんは息子のたくましい成長に「良かったかどうかは別としても、努力したというのが今でも多分生きてるのかな。そういう面ではやっておいて良かった」と胸を張った。





