有森裕子氏 女性、五輪経験者初の陸連新会長に就任 「日常の中に溶け込んで、陸上を愛されるものにしていけたら」
日本陸上競技連盟は25日、東京都内で理事会を開き、女子マラソン五輪2大会連続メダリストでこれまで副会長だった有森裕子氏(58)を新会長に選んだ。任期は2年。今年設立100周年の節目を迎えた陸連で、女性、五輪経験者では初の会長となった。新理事には男子走り高跳びで日本記録を持つ戸辺直人選手(33)=JAL=らが名を連ねた。前会長の尾県貢氏は顧問に就任した。
有森氏は会見で「気分的にはマラソンを5本くらい走った方が楽」とジョークを交えながら話した。「陸上は人間が生まれて最初に携わることができるスポーツ。五輪や世界大会だけではなく、日常の中に溶け込んで、愛されるものにしていけたらいい。丁寧に、おごることなく頑張っていきたい」と所信表明した。
会長には「人生で初めて立候補した」という。理由については自身の現役時代を振り返り、「(マラソンなど長距離に比べて)短距離は見向きもされていなかったが、それでも一人一人が踏ん張っていた」と回想。そして元男子400メートル障害五輪代表で、現在は日本陸連で強化委員長を務める山崎一彦氏(54)の名を挙げ、「とても大変だった時代を知っている彼らが素晴らしい選手を育てている。自分の思いをつぎ込んであれだけの行動をしている姿を、ただただ応援したくなった。陸上に思いを持ってやっていた仲間が今の陸上界を支えている。一緒にタッグを組まないでどうするのかという思いがあった」と時折、涙を浮かべながら話した。
9月には東京・国立競技場で世界選手権が開催される。1991年の東京大会で有森氏は女子マラソンで4位に入った。「当時は走ることに必死だった。34年たってこういう経験ができるのは、私にとってはぜいたくで素晴らしい機会。皆さんと一緒につくり上げて、輝かしいものにしていきたい」と力を込めた。
◆有森裕子(ありもり・ゆうこ)1966年12月17日、岡山市出身。岡山・就実高、日体大を経てリクルートに入社し、女子マラソンで92年バルセロナ五輪は銀、96年アトランタ五輪は銅メダルを獲得。日本の陸上の女子では初の五輪2大会連続メダリスト。10年に国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞。23年に世界陸連理事に就任。





