羽生結弦さん 魂のメッセージ 全7公演完遂「今は放心状態」清廉な祈りの舞など多彩な表現で魅了
フィギュアスケート男子の2014年ソチ、18年平昌両五輪金メダリストで、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(30)が制作総指揮を執る、ツアー公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd -Echoes of Life-」の千秋楽が9日、千葉県船橋市の、ららアリーナ東京ベイで開催された。アンコールを含む全15プログラムを演じ、チケット完売の8300人の観客を熱狂させた。全7公演を完遂し、最後のあいさつでは感極まる姿があった。
希代の表現者によって、「音」が、「物語」が、視覚的に氷上に描かれていった。
「本当に僕の頭の中、気持ち、心臓の中、魂、そんなものをすべて詰め込んだもの」と語る羽生さん自身が執筆した人生の旅路や「命」、「生きる」ことの本質を問うストーリー。第1部終盤には5連続でピアノ曲を滑走。プロジェクションマッピングで銀盤を流れていく五線譜の上で、旋律と一体となり、音を奏でていった。
そして圧巻だったのは、その直後。平昌五輪のショートプログラム(SP)「バラード第一番」で、冒頭の4回転サルコー、トリプルアクセル、最後の4回転トーループ-3回転トーループの連続ジャンプまで完璧に決めきって完遂。鬼気迫る演技で、喝采を浴びた。
時にダンサブルに、時にたけだけしく、そして「再生」をテーマにした「Danny Boy」では、純白の衣装でしっとりと清廉な祈りの舞を披露。2時間半超に渡って、多彩な表現で魅了した。
全身全霊を込めた全7公演を終え、最後のあいさつでは感極まった表情を浮かべた。「みんな生きてください。また未来でお会いしましょう!」と叫んだ羽生さん。次回作の構想については「とりあえず今は放心状態。ゼロです」と語りつつ「自分の心と正義を信じて、真っすぐに進んでいきたい」と見据えた。見る者に希望の光を指し示す、氷上の英雄譚(たん)はまだまだ続いていく。




