朝乃山 1年で幕内はい上がる 亡き恩師一家に復活誓った 強い大関もう一度見せる

 「大相撲名古屋場所」(10日初日、ドルフィンズアリーナ)

 コロナ禍の外出禁止期間にキャバクラ通いが発覚して受けた6場所連続出場停止が明け、三段目で復帰する元大関朝乃山(28)=高砂=を恩師の家族らも待ち望んでいた。富山商で指導を受けた故浦山英樹氏の長男で近大(大阪府東大阪市)相撲部の後輩となる浦山秀誠(2年)は強い大関の姿をもう一度、見せてくれることを願った。同氏の父・浦山松男氏(74)は天国の息子に代わり、朝乃山を叱咤(しった)激励した。

  ◇  ◇

 朝乃山の「山」は十両昇進を見届け、天国へ旅立った浦山先生の1字をもらった。先生の長男・秀誠は幼少期より「石橋さん(朝乃山の本名)」と慕った。父が2017年1月、40歳で死去して以降、朝乃山が家族も同然の頼れる兄貴だった。

 ずっと背中を見てあこがれてきた。富山商から近大と迷わず父と朝乃山と同じ相撲の道を歩んだ。2人に言われてきた「頑張れよ、前に出ろ」の言葉を胸に刻み稽古する。

 呉羽中3年の弟・将瑛も相撲に打ち込む。兄弟にとって「石橋さんは偉大な先輩。フレンドリーに接してくれる」と、強く優しく時に甘えられる存在だ。

 秀誠は183センチ、155キロの巨漢で左四つ。「相撲は大関の相撲を見てきた。圧力をかけること、まわしの取り方とか勉強になる」と、お手本にしてきた。

 1年ぶりの帰還は楽しみでしかない。「今まで通りの強い朝乃山を見たい。一気に前に出る大関の相撲をまた見たい」と目を輝かせる。自身は再び団体のレギュラーメンバーに入った。「石橋さんを超えたい」と朝乃山も果たせなかった団体での学生日本一が目標。将来は父と同じ指導者の道を志している。

 先生の父・松男氏は天国の息子に代わり、叱った。名古屋場所の番付発表前の6月下旬、朝乃山は法要のため故郷富山を訪れた際、先生の眠る仏壇に手を合わせにきた。

 恩師への復帰報告にずっと涙を流していたという。「『申し訳ないことをした。頑張ってはい上がっていく、見守ってください』と言っとったんだろうな」と松男氏は感じた。

 19歳から74歳まで道路にアスファルトを敷く建設業で鍛えた人生の先輩は1年ぶり復帰を前に道を説いた。「相撲協会から給料をいただいて、守るもんは守っていかないといけない。東の大関は横綱に一番近い。そういう地位で不祥事を起こして協会にうそまでついて何を心得とる!!自分の立場を考えろ。社会にはルールがある。人気スターなら行動を自覚しないとだめ」。

 朝乃山は神妙にうなずき聞き入っていた。そして「見とってください。1年で幕内にはい上がります」と、固く誓ったという。

 天国の息子は朝乃山にいつも言っていた。「負けるなら前に出て負けろ」-。今度こそ堂々と迷わず道を歩んでほしい。そして、息子が信じた「横綱」の夢を再び見守る。

 ◆浦山 秀誠(うらやま・しゅうせい)2003年1月23日、富山市出身。呉羽中で全国中学大会準優勝。富山商高1年時に個人で全国総体出場。家族は母、妹、弟。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

スポーツ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス