坂本花織 自己ベストで世界女王「自分を信じてやってきて良かった」真央以来8年ぶり
「フィギュアスケート・世界選手権」(25日、モンペリエ)
女子フリーで、北京五輪銅メダルの坂本花織(21)=シスメックス=がSPに続いてフリーも1位の155・77点を出し、全て自己ベストを更新する合計236・09点で初制覇した。日本勢では2014年の浅田真央以来8年ぶり6人目。樋口新葉(明大)は合計188・15点で11位、初出場の河辺愛菜(木下アカデミー)は合計182・44点で15位。日本は上位2人の順位合計が「13」以内となり、来年3月の世界選手権(さいたま市)の出場枠最大3を確保した。アイスダンスのリズムダンスで村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)は67・77点で15位スタートとなった。
気付けば大粒の涙があふれていた。高々と昇る日の丸。表彰台の真ん中で聞く君が代。「頑張ってきて良かったなと思った瞬間に。しんみり、じわーってなって…」と坂本。「ついに世界選手権で(国歌を)自分で流したなって、めっちゃうれしい」。泣いて笑って、また泣いて。満面の笑みが輝いた。
覚悟を決めた表情で坂本はリンク中央へと進んだ。SP1位で迎えたフリー。演じるのは女性の強さを表現するナンバーだ。試合直前には「怖すぎる」と涙したが、中野コーチの「必死ほど強いものはない」との言葉に、われに返った。全てのジャンプを着氷し、スピン、ステップともに最高評価のレベル4を獲得。クライマックスの歌詞と、坂本の雄大な滑りが重なった。
「強さと美しさは共にある。I am a woman」-。
右手を伸ばしたフィニッシュポーズを決めると、何度も何度も右の拳を握った。
4年前の平昌五輪は「怖いもの知らず」だった。大波小波を乗り越えて、やっとの思いでたどり着いた北京五輪。銅メダルを獲得し「燃え尽きてしまった」。この1カ月、「世界選手権に向けての練習は今までで一番大変だった」という。
それでも、この1年の歩みには自信が持てた。厳しい練習に耐え抜いた自負もあった。「自分自身を信じてやってきて良かった」。4回転などの大技がなくとも、世界中を魅了する滑りができる。道を貫く強さが、屈託のないその笑顔を一層輝かせた。
◇坂本花織(さかもと・かおり)2000年4月9日、神戸市出身。NHK連続テレビ小説「てるてる家族」で、五輪選手になるヒロインの姉を見て4歳で競技を始めた。神戸野田高を卒業し、神戸学院大経営学部に在学中。16年全日本ジュニア選手権で初優勝。シニアデビューの17年に全日本選手権2位に入り、18年平昌五輪で6位。全日本選手権は18、21年に優勝。22年北京五輪は個人、団体ともに銅メダルを獲得した。コーチは中野園子氏、グレアム充子氏、川原星氏。159センチ。




