【五輪コラム】平野の批判は的を射ている 主観に基づくハーフパイプの採点

 男子ハーフパイプ決勝の2回目で、エアを決める平野歩夢=2月11日、張家口(共同)
 男子ハーフパイプで金メダル獲得から一夜明け、記者会見する平野歩夢=2月12日、張家口(共同)
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 スノーボード・ハープパイプ(HP)の採点に当たる審判員に対して、平野歩夢がこれほどまでに厳しい批判をしたことはなかったはずだ。五輪3度目の挑戦で念願の金メダルを獲得した翌日の12日、記者会見で採点の評価基準が「まだまだちゃんとしていない」と強い不満を表明し「他競技にあるような新しい(採点の)システムをしっかり(構築)すべき時代になったと思う」と強調した。的を射た批判だった。

 ▽同じ技で得点に違い

 男子HP決勝2回目の演技はどれもミスなく舞い降りた。これで平野の優勝は間違いないだろうと、日本チームだけでなく、テレビやインターネット中継で観戦していた世界中のファンは思ったのではないか。

 しかし、審判団の評価は違った。技の難易度で平野よりかなり劣るスコット・ジェームズ(オーストラリア)が92・50点を得たのに対して、平野は91・75点にとどまった。平野は現在最高難度とされる「トリプルコーク1440」(軸を斜めにした縦3回転、横4回転技)をはじめ、すべて難度の高い技を次々に繰り出したのだが。

 その得点表示の瞬間、平野は少し首を傾げ、けげんな表情を浮かべたようにみえた。もしも、最終3回目にジェームズを逆転できなければ、金メダルを逃すことになる。大きなピンチが突然やってきた。

 3回目、平野は2回目と同じ構成の技を繰り出す。今度は96・00点が出た。逆転での優勝が決まった。

 ▽審判の説明を聞きたい

 平野の2回目と3回目の演技は、どこがどう違ったのか。同じ内容であるにもかかわらず、異なる評価となった理由について、平野本人も、出場した全選手も、そしてファンも審判団から説明を聞きたいと思ったのではないか。しかし、そのようなフォローは残念ながらなかった。

 2回目の自身の演技に対する審判団の評価は不当に低いものだったと、平野は感じたからこそ、翌日の記者会見で異例の批判をしたのだ。憤りは丸1日たっても収まらなかったようだ。

 ▽全体的印象は主観だ

 HPの採点は、それぞれの技に、特定の点数が決められているわけではない。同じ採点競技でも、体操やフィギュアスケートとここは大きな違いだ。

 それぞれの技についての要素点や、選手の演技表現力についての基準などが定まっていない中で、審判員は一体何をもとに採点するのだろう。明確で具体的な基準のない採点は、選手に疑念を呼び起こす危険をはらんでいる。

 HPは若者の遊びから徐々に発展し、大規模な競技会が開催されるようになった。採点では、その遊びの要素、つまり競技のルーツを大切にしているのだろう。自由な表現、個性的な技、格好良さなどは時代が進んでも、このスポーツの核心的な価値であることに変わりはない。

 しかし、だからと言って、それらはいずれも得点化するには無理があると考え、より具体的で透明性の高い採点方法を研究しないのであれば、それは間違っていると思う。

 現行の規則では、ジャッジは技の難度、高さ、さらに着地や空中姿勢の巧拙に着目し、また技の多彩さにも注目しながら「オーバーオール・インプレッション」という方式で採点するという。和訳すれば「総合的な印象」方式か。

 具体的かつ客観的な要素の合計点ではなく、あくまで印象という主観に基づく採点方式をとっているから、審判と異なる印象を受けた選手やチーム、ファンから、ときに抗議や不満の声が上がるのではないか。

 ▽ルール近代化のとき

 今大会で引退を表明したショーン・ホワイトという米国の人気者に支えられ、HPは冬季五輪の人気種目になった。選手間の競争は大きなエネルギーとなって、競技を発展させている。

 言うまでもなく、競技運営者には採点についての説明責任がある。公正で公平な競技の確立のためには、合理的根拠に基づく採点方式を整えていることが必要だ。「文化」を尊重する精神を大切にしながらでも、説得力のある競技ルールの近代化に乗り出すことはできる。そのときが来たのではないか。新しい五輪王者の発言は大きなインパクトがあると思う。(共同通信・竹内浩)

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