鶴竜の兄弟子も無念 風呂場でかわした短いやり取りに込めた思い「2人の空間なので」

 「大相撲春場所・12日目」(25日、両国国技館)

 序二段の鋼(39)=陸奥=は旧井筒部屋から20年、苦楽をともにした横綱鶴竜(35)の引退に「本人が一番、悔しい」と思いやった。

 前日、風呂場で横綱の背中を流していた際、「引退することになりました」と告げられた。「おう」と、一言だけを返した。

 「身近で見ているから一番分かっている。(背中を流すのは)2人だけの空間なので。自分と横綱の思いは尽きない。本人が決めたなら仕方がない」と、家族より長い時間をともに過ごした2人だけで心が通じ合った。

 「身近で最後まで見てこられた。休場して気持ちはあるけど、もうひと踏ん張りできると思ったけど…。本人も言っていた。『横綱は横綱の相撲を取らないとダメなので』と。最後に土俵に上がる姿を見たかったけど…」と、兄弟子としても無念さはある。

 横綱がモンゴルから来日し、入門から間もない頃は、「ご飯もおごったり、おごられたり」と、互いにお金がなかった。場所休みはボーリングなどよく遊びに行った。

 慣れない食事面も「わさび抜きで」、「納豆にからしは入れないで」と兄弟子として気遣った。教育係も務めたが「日本のしきたり、礼儀作法は1、2回言ったらすぐ覚えてくれた」と頭の良さには舌を巻いた。

 普段は感情を表にあまり出さない横綱ながら、身近にいれば、負けて落ち込んでいるのは分かった。「『あー』ってため息を付いたり、そんな時は『横綱、それではダメだよ、飯がまずくなる。横綱が元気じゃないとみんな元気が出ない』と言った。自分だけが言える。兄弟子だから」と、側で厳しいことも伝えてきた。

 2019年の秋場所で先代師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)が死去。悲しみの中、ともに陸奥部屋に転籍した。陸奥部屋の力士に横綱は手取り足取りアドバイスを惜しまなかった。「横綱が来てくれて良かった。鋼が来てくれて良かった」と、部屋の人々から感謝されたのもうれしかった。

 2014年春場所で初優勝し、横綱に昇進。横綱として丸7年で引退。鋼は「優勝を決めて、横綱になれるとなってうれしかった。まさか自分の部屋から出るとは。すごくいい夢を見させてもらった」と笑みを浮かべた。

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