ハンド男子・部井久アダム勇樹、五輪延期は「プラス」 自粛生活に苦しむも体鍛える

 試合中の部井久アダム勇樹=中大スポーツ新聞部提供
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 東京五輪で33年ぶりの五輪出場となるハンドボール男子で活躍が期待されるのは、部井久アダム勇樹(21)=中大=だ。博多高3年で史上初めて高校生で日本代表に選ばれると、2018年からは競技が盛んなフランスで経験を積んだ。新型コロナウイルスの影響で試合の中止が相次ぐ中、テレビ会議アプリ「Zoom」で単独インタビューに応じ、競技や五輪への思いを語った。

 2018年から強豪国のフランスで腕を磨く部井久の武者修行2年目は、さらに選手としての幅が広がったシーズンになった。

 昨夏、フランス2部リーグのサラン・ロワレに移籍。「力的には2部でも真ん中かちょっと上ぐらい。優勝争いできるかどうかも分かんなかった」というクラブに移るべきか悩んだが、当時2部でプレーしていた日本代表主将の土井レミイ杏利(大崎電気)に相談。「すごくいいチーム」と背中を押された。「すごく欲しがってるというのも伝わってきた」とサランの熱意も感じ決断した。

 1年目の18-19年シーズンは当時1部リーグのセッソン・レンヌに所属。トップチームでのリーグ戦出場はかなわず、若手主体のチームで4部リーグで戦った。サランでは違った。中大と日本代表の活動も掛け持ちしながら、トップチームの一員として2部リーグ13試合に出場し、計4得点。昨年12月19日の古巣セッソン戦でもゴールを決めた。

 チームは14チーム中8位に終わって1部昇格を逃したが、自身は戦力として貢献。セッソンでは故障による長期離脱もあったが、サランでは「大きいけがもなく、1年間ちゃんと戦うことができた」。大型選手にもまれながら、練習試合も含めて週に1試合程度を確実にこなした。

 「学生とは違って1年間ずっと試合をするので。疲労もたまりますし、その中で成長していかないといけない難しさはすごくあった」。19-20年シーズンでは「試合が続くとメンタル的にもすごくしんどいんだなって学べた。そういう中で結果を残すにはどういうことが必要なのかもちょっとずつ分かってきた」と、準備や心身のケアの大切さも学んだ。

 五輪に向けて順調に力を伸ばす中、今年に入って新型コロナウイルスの感染拡大がフランスを襲った。「(感染者が)1日で何千人も増えたりする日もあった。目まぐるしく環境が変わっていってるのはすごく感じてました」。状況は一変し、リーグ戦も中断。5月の予定を早め、3月中旬に帰国した。その後、4月に入ってシーズン打ち切りが決定。ロックダウンとなったフランスでは理髪店も閉まり「みんな髪も切れてなくて、丸刈りにしてるチームメートもいっぱいいる」と仲間から深刻な様子を聞くこともあった。

 現在は福岡市の実家で自粛生活を過ごす。「高校生のとき以来のゲーム機を使ったり。あとは毎日走って、自分でできるようなトレーニングを毎日やってます」。気分転換も取り入れながら、体を鍛える日々だ。

 毎日激しい練習を積んできたアスリートにとって、この環境の変化は大きい。「なんで今俺こんなに走ってるんだろうってちょっとなりつつある。モチベーションがすごい今難しくて」と悩むこともある。苦しみながらも「めちゃくちゃやりたくなる。自分は好きなんだなと改めて思う」とハンドボールへの思いを再確認している。

 今回の帰国でサランとの契約は終了。来夏の東京五輪までは日本でプレーするつもりだが、数年後には再びフランス・リーグへの挑戦を視野に入れる。「とにかく日本のハンドボールをしっかり勝たせたいっていうのが自分の目標で、勝利に貢献できるような選手になるのはずっと変わらない。そこはぶれずに、しっかり日本の中心選手となれるように、世界でしっかり活躍できるような選手になれればいい」とさらなる成長を誓う。

 今は東京五輪へ思いを切らさない。「延びたことは僕にとってはプラスにしかとってない。あと1年ちょっと、すごくラッキーだと思って、とにかく成長して、さらにいい形でオリンピックを迎えられれば。結果を残すか残さないかで10年後、20年後の日本のハンドボールがすごく変わってくると思う。しっかり結果を残せるように」。アスリートにとって厳しい今を乗り越えた先に、夢舞台が待っている。

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