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10区区間新の創価大・嶋津は小説家ランナー「主人公らしい走りができた」

 「箱根駅伝・復路」(3日、神奈川県箱根町芦ノ湖駐車場~大手町)

 創価大が9位に入り、初のシード権を獲得した。最終10区、11位でタスキを受けた嶋津雄大(2年)が区間新記録を19秒更新する1時間8分40秒の快走を見せ、2つ順位を上げた。これまでの最高順位は3大会前の12位だった。

 真っ白の帽子をかぶり、苦しそうな表情になりながらも、嶋津は懸命に腕を振った。区間賞の力走でなんとかゴールテープを切り「安心しかない。シード権獲得できたので、うれしくて幸せです」。自然と涙があふれていた。

 初めての箱根路は、不安と緊張でいっぱいだった。7キロ過ぎ、左もも裏に突如違和感が走った。何度も何度も左足をたたき、不安を必死に振り払った。「足がつりそうで、どうなるか本当に分からなかったので」。1キロ3分のペースを守りながら、前だけを見た。沿道の声援に背中を押された。胸に光るのは、たくさんの思いを乗せた赤と青のタスキ。「主人公になりたい」-。その夢がかなった瞬間でもあった。

 ヒーローに憧れ、多くの人に影響を与えたいと、趣味で自らライトノベル小説を書いている。先日、陸上と異世界をテーマにした物語を書き上げたばかり。4月締め切りの電撃小説大賞にも応募を予定するほどの本格派だ。

 「どんな物語の主人公も、ピンチの時には勝つ。ここで勝てば主人公になれると思った」と嶋津。「区間新記録を取れた実感はない。たまたま区間新だった」と遠慮がちに語りながらも「主人公らしい走りができたと思う」と喜んだ。

 実はチームで書いている目標設定用紙には「俺の勝利を取る」と記し、自分がシード圏内でゴールテープを切るところまでを物語風に仕立てて枠いっぱいに書き込み、提出。榎木和貴監督も「嶋津ワールドです」と笑顔でたたえた。

 ヒーローらしく、誰かの背中を押したい。その思いも走りに込めた。遺伝性の目の病気である網膜色素変性症を患っており、暗いところが見えづらい。薄暗いところでは急に飛び出してくるようなものが見えにくく反応も遅れるため、特に冬は朝、夜の練習に制限があるという。まだ暗いうちから始まる朝練習は、集団走に入れない。電気のつくトラックや、体育館の周りを走ることで補ってきた。若葉総合高時代は、約70メートルの廊下を一人で何十往復もする練習を地道に重ね続けた。「一歩を踏み出せない人に勇気を与えられる走りができたと思う」。少しだけ誇らしげに胸を張った。

 まだ2年生。榎木監督も「2、3年生の今回入っていないメンバーも自己記録を更新し、レベルアップしている。来年はもうちょっと頑張りたい」と手応えを口にする。初のシード権を獲得し、創価大と嶋津が紡ぐ物語はまだ始まったばかり。“小説家ランナー”にすら描けないドラマチックなストーリーがこの先、見られるかもしれない。

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