ドーピング問題で異例の製薬会社提訴 レスリング阪部「夢つぶされる」胃腸薬に混入

 服用したジェネリック医薬品(後発薬)に本来含まれていない禁止物質が混入し、ドーピング検査で陽性反応が出た問題で、製薬会社2社を提訴したレスリング選手の阪部創(26)=自衛隊=が24日、都内で会見を行った。今月8日付で沢井製薬(大阪市)、陽進堂(富山市)に慰謝料など約6000万円の損害賠償を求める訴状を東京地裁に提出。岡部鉱平弁護士によると、国内でドーピング問題が裁判に発展するケースは初めてだという。

 阪部は男子グレコローマンスタイルで16年世界選手権(非五輪階級)に出場したこともあるトップ選手。18年の全日本選抜選手権では五輪階級の77キロ級で2位に入ったが、ドーピング検査で陽性反応が出たため、同年8月から半年間の暫定的資格停止処分を受けた。

 19年2月、阪部サイドが調査を依頼していた米国の分析機関から、服用していた医薬品エカベトに禁止物質アセタゾラミドが混入していたことが報告された。その後の聴聞会で阪部に過失がないと認められ、処分が取り消された。

 阪部によれば、減量後の胃腸の負担を減らすため、チームに帯同していたスポーツドクターから処方されたジェネリック(後発)医薬品を服用したという。サプリメントはJADA(日本アンチ・ドーピング機構)認証マークのものを摂取するなど細心の注意を払っていたが、安全であるはずの医薬品から添付文書に記載されていない禁止物質が検出されたことから「驚きは大きかった」(阪部)と寝耳に水だったという。

 沢井製薬側は、原薬の製造を委託していた海外の製造ラインにアセタゾラミドが残留したままの状態になっていたことが原因としているが、混入の予見はできなかったと主張。また、人体には影響がないことから、アスリートがドーピング検査に引っかかることについては責任を認めていないという。

 レスリングの東京五輪代表選考会は、阪部が出場資格停止を受けていた昨年12月から始まっている。ただ、グレコローマンスタイル77キロ級は内定しておらず、今年12月の全日本選手権から代表を狙うチャンスが残っているが、競技人生を棒に振る可能性もあった。

 阪部は「資格停止期間の半年はすごくつらい思いをした。私のように、タイミングが悪ければ五輪に挑戦できないとか、こういう形で夢をつぶされるというのは起こってはいけないこと。二度とこのようなことが起きてほしくない」と再発防止を訴えた。

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