日大・内田前監督 傷害罪教唆の可能性も…有力反証なければ、「行列」北村弁護士指摘

 アメリカンフットボールの日本大学の選手が悪質な反則行為で関西学院大のクオーターバック(QB)を負傷させた問題で、被害選手の父親が21日に警察に被害届を提出したことを明らかにした。競技場で起こった大学スポーツの出来事を警察はどう判断するのか、傷害罪等の適用、立件は考えられるのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に聞いた。

 北村弁護士は日大の選手の行為について「傷害罪の適用もありうるのでは」との見解を示した。北村弁護士によると、スポーツも格闘技も、本来その競技が予定しているコンタクト(接触)の範囲であれば違法性がなくなるという。違法性阻却事由と呼ばれるもので、刑法において例外的に違法性が否定される根拠となる事由をさす。例えば正当防衛、緊急避難、正当業務行為、被害者の承諾などがあげられる。

 スポーツにおけるある行為の違法性がなくなるかどうかは、そのスポーツが本来予定している行為から大きくはずれているかどうかによる。「これは重要なポイント」と北村弁護士は指摘した。例えばボクシングで相手をけり、けがをさせれば違法性があり、傷害罪に当たるという。

 アメフットでは、ボールを持っていないオフェンスとディフェンスがぶつかり合うものの、ボールを持っていないQBにタックルすることはルール上、厳しく禁じられている。ボールを持っているQBへのタックルは正当なプレーだが、QBがボールをパスをした直後に勢い余ってタックルしてしまう「レイトヒット」も禁じられているほどで、今回のようにQBがパスをして数秒後に背後からタックルするという行為はアメフットにおいては本来予定されていない重大な犯則行為である。つまり、違法性はありとされる可能性が高く、捜査当局が日大選手について傷害罪を適用し、立件することが考えられる。

 なぜ、選手がそのような危険な行為をしたのか。反則行為を働いた日大の宮川泰介選手は22日に会見し、問題の試合前日にコーチを通じて内田正人前監督から「相手のクオーターバックを1プレー目でつぶせば(試合に)出してやる」と指示を受けたと説明した。「つぶす」という意味について宮川選手は「けがをさせろという意味」と捉えたと語った。宮川選手はまた、「交流試合がなくなってもいいと言われた」とも述べた。このことは、とんでもない反則行為を実行してでも関学のQBをつぶせという意味と考えられ、内田前監督の反論は難しい状況となった。

 内田前監督は19日に大阪・伊丹空港で会見した際、指示について問われて明確な否定の言葉はなかった。今後、内田前監督が有力な反証をあげられない限り、内田前監督について傷害罪の教唆が問われる可能性もある。その場合、正犯(実行犯)に科される傷害罪の法定刑の範囲内で処罰される。

 傷害罪は刑法204条に規定され、「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する」と定められている。

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 北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。

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