内村が3位 11連覇逃すも晴れやか「肩の荷が下りた」

 「体操・全日本選手権」(29日、東京体育館)

 決勝が行われ、男子で前人未到の11連覇を狙った予選5位の五輪王者、内村航平(29)=リンガーハット=はトップの得点をマークしたが、合計171・664点で3位に終わった。全6種目をこなしての敗戦は、08年9月の全日本学生選手権で植松鉱治に敗れての2位以来、約9年半ぶり。予選2位の谷川翔(順大)が172・496点を出し、19歳2カ月で史上最年少優勝。予選トップの白井健三(21)=日体大=は2位だった。女子は村上茉愛(21)=日体大=が3連覇した。

 10年前の自身と同じ19歳での新王者誕生を見届けると、内村は笑っていた。優勝した谷川翔に「おめでとう」と声をかけ、ずっと自身を超えて優勝することを期待していた白井には「なんで?」とツッコミを入れた。

 昨年10月の世界選手権で個人総合の連勝記録は40で止まっていたが、あくまで左足首負傷による途中棄権。9年半ぶりに“人類”に敗れた。1年前に「地獄」と評した勝ち続ける重圧から解放された29歳は「いや、もうすごく晴れやか。勝ち続けることは自分との闘いだった。自分というのは一番超えるのが難しい存在だった。肩の荷が下りた」と、今までに見たことのない柔らかな表情で語った。

 意地は見せた。首位白井と1・001点差で迎えた決勝。最初の種目の床から安定した演技をそろえ、最終種目の鉄棒では1位の14・733点をマークした。上位2人には届かなかったが、決勝だけの得点86・566点は全体トップ。全6種目で14点以上をマークしたのは内村だけだった。「29歳で3位だし、いいんじゃないですか。翔とは10歳差ですから」と胸を張った。

 2年後の東京五輪。世代交代にあらがいながら、代表に入る覚悟を決めている。「そのためには毎年代表になり続けることが大事」。10月の世界選手権(ドーハ)へ、個人総合で代表になるには5月のNHK杯で上位2人を逆転する必要がある。「(代表へ)つながったと思う。ギリギリ。醜い姿であっても、日本代表であり続けたい」。王座は譲っても、内村にはまだ譲れないものがある。

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