愛媛・片山 安定の道を捨てて夢に向かう…NPB入りへ元銀行員が突っ走る
【愛媛・片山悠投手】文=高田博史
ルーキー・片山悠がフル回転中だ。開幕戦から中継ぎ、抑えとあらゆる場面に登場している。初の先発マウンドとなった対香川前期3回戦(4月16日、坊っちゃん)で、初勝利を手にした。
東海大在学中から神奈川のクラブチーム「横浜ベイブルース」で野球を続けた。だが、土日祝日しか練習ができず、平日は個人でウエート・トレーニングをするしかなかった。いま、毎日練習できる環境で“野球ができるありがたさ”を身に染みて感じている。
「やらせてもらっている環境が当たり前ではない。ファンの皆さん、地域の皆さんに感謝の気持ちをもってプレーしています」
クラブチーム時代にチームメートだった阿部直晃が先にアイランドリーガーとなり、愛媛でクローザーとして結果を残している。
阿部の活躍は耳にしていた。卒業後に後を追い掛ける選択肢もあったが、東京信用金庫に就職し、金融マンとしての道を選ぶ。
しかし、まだやり切っていない。NPBに挑戦する夢を諦められなかった。
「やり切りたいなと。銀行員をずっと続けるのが正解かもしれないんですけど、やっぱり後々野球やっとけば良かったなって思いするのが絶対嫌だったので。だったら思い切って挑戦してみて、ダメだったらまたそこから考えればいい」
所属する融資担当の上司が「入ったからには辞めて欲しくない。だけど自分の夢、目標があるなら、突き詰めて達成してほしい」と背中を押してくれた。支店長、人事担当者も最後は快く送り出してくれた。
この挑戦が間違いではなかったことを、結果で証明しなくてはいけない。
4月29日、対香川前期6回戦(レクザム)で2度目の先発マウンドに登っている。初回に失点したが、粘りの投球を見せる。二回以降、無失点を続けると、終盤に打線が3点を奪い返してくれた。8回1失点の好投で2勝目を手にしている。
「真っすぐで押せる投手が理想です。制球力もそうですけど、とにかく真っすぐにはこだわりたい」
東海大の先輩、菅野(巨人)を目標に、自身の可能性をさらに磨く。