平野佳寿がメジャーで活躍できる理由

 大谷翔平や田中将大がけがで戦列を離れる中、日本人メジャーリーガー唯一の生き残りとしてめざましい活躍をみせてくれているのがダイヤモンドバックスの平野佳寿だ。

 ここまで33試合に投げ2勝0敗12ホールド防御率1・50。5月5日のアストロズ戦で失点して以来18試合連続無失点記録も継続中なのだ。フォーシームとスプリットの2種類の球種だけで、メジャーの名だたるバッターを翻弄(ほんろう)していく。もちろん成功をつかんだ理由として、球のキレやキャッチャーのリード、相性なども大きな要因であることは間違いないが、果たしてそれだけだろうか。

 実は昨年末、メジャーへ行く前の平野選手と食事をご一緒させてもらう機会があった。2軒目のお店が個室ではなかったこともあり、周りのサラリーマンのおじさんに声をかけられまくった。もちろんプライベートであるし、そういうのが苦手な選手がほとんどだと思うが、彼は違った。

 「はい、平野ですっ」

 「メジャーでも頑張りやっ!」

 「はい!ありがとうございます!」

 「サインくれへんかな?」

 「大丈夫ですよ!」

 心配をよそに気づけば、知らんおっちゃんや、店の従業員さんと楽しそうに盛り上がっていた。

 言葉も通じない、知り合いもいない初めての場所。私生活のストレスは少なからずプレーに影響するはずだ。きっとこの圧倒的な社交性も成功の大きな要因になっているのではないか。

 そして、彼をよく知る鳥羽高校野球部時代の先輩で、現在は乙訓高校野球部監督の市川靖久さんからも貴重な話が聞けた。

 -初めて会った印象は?

「彼が中学3年の冬にセレクションに来たんですが、背が高くて、とにかくガリガリ。投げる球はそこそこ速いが、まぁ普通だなぁと思いました。ただ、卯滝監督は『こいつはうまくいけばプロに行くな』とボソッとつぶやいてました。僕は何を言っとんねん??でしたが(笑)高校に入学してからも、球は速いけどコントロールは悪いし、大したことはないといった印象でしたね。ただ、練習に関しては真面目で、先輩や同級生からの信頼も厚かったです。きっと後輩からも慕われていたと思います」

 -覚えているエピソードはありますか?

 「大学4年生の時に、京産大3年生の彼と対戦したのですが、完全に僕がやってる野球とはレベルが違うと感じました。一応ライト前にヒット打ちましたが、ただの振り遅れです(笑)あと昨秋の近畿大会、神港学園との試合前に大量の差し入れを持ってきてくれました」

 -どんな方ですか?

 「とにかく高校時代からプロ野球選手になっても、メジャーに行く直前でも、人間性は全く変わらないし、自分たちに対する態度も一切変わらないので、後輩ながら尊敬する所がたくさんあります。そして野球部員にはそんな人間性を勉強してほしいと伝えています」

 自分の立場が変わっても、どこに行っても誰に対しても態度が変わらない、そんな芯の強さがメジャーでどんなすごいバッターと対峙(たいじ)しても自分の実力を発揮できることにつながっているのかもしれない。

 そして、高校野球大好き芸人的観点からも今年の活躍はうれしいのだ。なんといっても、母校の鳥羽高校は夏の甲子園第1回大会の優勝校である京都二中の流れをくむ学校で、彼が甲子園に出場した時は京都二中創立からちょうど100年目の2000年だった。そして今年は夏の高校野球は100回記念大会を迎える。そんな節目の年に挑戦を誓い、大活躍できるのだからこんな素晴らしいことはない。

 現在ナ・リーグ西地区首位のダイヤモンドバックス(日本時間17日終了時点)。平野佳寿伝説はまだ始まったばかりかもしれない。

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