広島・田中広輔 下半身のキレ取り戻す 自身初2軍キャンプ発進のベテラン「走れなくなったらダメ」

 25年シーズンに並々ならぬ思いで臨む選手を取り上げるキャンプ企画「今季に懸ける」(随時掲載)。第2回は広島・田中広輔内野手(35)を直撃した。今春はプロ12年目で自身初の2軍キャンプスタート。昨季は66試合の出場で打率・156と悔しい1年に。巻き返しを狙うベテランが意気込みを明かした。

 立場が変わっても野球に対する姿勢は不変だ。もう一度、輝きを放つために-。プロ12年目の田中が、自身初の2軍春季キャンプで汗を流している。

 「やることは変わらないんで、練習量だけしっかり確保したい。僕のやるべきこと、僕のパフォーマンスが出せればいいのかなと思う」

 キャンプインは1軍キャンプ地の宮崎県日南市ではなく、広島県廿日市市の大野練習場で迎えた。気温1桁の極寒の中、実績十分の田中でも特別扱いはなし。白い息を吐きながら、バットを振り込んだ。キャッチボール相手を務めるのは、左肩脱臼の影響で2軍スタートなったドラフト1位・佐々木(青学大)。本人から志願され、快く引き受けた。

 「チーム全体の中で、立場的にも若い子の手本にならないといけない。何か感じてもらえればいいかなと思いますし、聞かれたら答えてあげようかなというスタイルでいる。ただ、僕はコーチでもなんでもないんで、まずはしっかりと自分のことをやるというのが大前提ですね。(自身は)けがなく動けてるので、それで十分かなと」

 16~18年は全試合出場を果たし、不動のリードオフマンとしてチームの3連覇に貢献。しかし、ここ数年は思うような数字が残せていないのが現状だ。昨季は66試合の出場で打率・156、2本塁打、7打点。途中出場の試合も多く、試合への入り方の試行錯誤は続いている。

 「試合に出ていれば、いい緊張感の中で4打席ある。打席が全くない中の1打席で勝負をかける気持ちの持ち方というのは大きく違うな、と感じた。気持ちの持ち方をどうするのかというのは、いろいろ試しながら、準備でもこれをしたらよかったなとか、だめだったなとか、これからも試しながらやりたい」

 再起のカギになると考えているのが、下半身のキレだ。オフにランメニューを重点的に取り組んできた成果も出ており、キャンプ初日のランメニューでは、若手よりも先にゴールする場面も。35歳でも走ることを怠らない。そこには田中なりの考えがある。

 「今は走らなくてもいいとか、いろんなことが言われてますけど、やっぱり走る。人間の体はスポーツ選手じゃなくても足腰が悪くなったら衰えも早いというのが前提にあるので、走れなくなったらだめだなと思う」

 今季が新井政権3年目。指揮官はベテランに対し、「結果を出してほしい。がっつり競争してもらう」と目に見える数字を求めている。それは田中も重々承知。その上で、熾烈(しれつ)なサバイバルに飛び込んでいく覚悟だ。

 「(競争は)毎年そうなんでね。ただ、ベテランでも結果を出せば使ってくれる。若手にない経験があっても、評価されるのは目に見える数字。数字にこだわりつつ、チームが勝つためにはどうしたらいいとか、自分がやらないといけないことをまずは考えて。それができればおのずと結果もついてくる。勝利の輪に必要なピースとしてやっていきたい」

 酸いも甘いも味わってきた背番号2。このまま終わるはずがない。並々ならぬ覚悟でもう一度、輝く姿を追い求めていく。

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