広島・黒原は心折れていない 5・4巨人戦で死球→翌日登録抹消→2軍戦登板なし

 取材記者の心に響いた話を取り上げる「番記者の心」。広島の21年度ドラフト1位・黒原拓未投手(22)=関学大=は5月4日・巨人戦(マツダ)で吉川の左肩甲骨付近に死球を当てるなどで失点。イニング途中に降板。翌日、出場選手登録を抹消されると2軍戦の登板もないままシーズンを終えた。左腕に何があったのか、思いを聞いた。

  ◇  ◇

 黒原の心は折れてなどいなかった。

 「全然大丈夫です。みなさんが思っているより強いんで。(死球を)当てたことはもちろん反省していますし、自分の技術がない。反省して、もっとうまくならないといけない。中傷は気にしてない」

 5月4日・巨人戦。八回から登板した。2点を失ってなおも2死三塁から吉川の左肩甲骨付近に当ててしまう。起き上がることができず、担架で運ばれる。その間、黒原は帽子を取ってぼう然と見守るだけだった。自身のSNSには誹謗(ひぼう)中傷が殺到。マウンドで立ち尽くす姿を思い浮かべれば精神状態が心配になった。

 翌日に出場選手登録抹消。そのままシーズン終了まで2軍戦の登板もなかった。ファンの間では精神を病んでしまったのではないかと臆測を呼んだ。

 実際には左肩を痛めて、投球できる状態ではなかったという。そこから長いリハビリ生活に入っていた。

 今もSNSには批判するコメントがそのまま残っている。

 「消してないです。普通に見てました。見てもなんも思わないです。応援してくれるコメントもある。そういう方たちを大事にして期待に応えられるようになれたら。プロ野球選手はみんな言われる。相手選手にもファンはたくさんいるので仕方ないと思います」

 SNSの普及で選手自身が発信することが容易になった。一方で心ないメッセージもダイレクトに届くようになった。こんな時代だからこそ、匿名の言葉に一喜一憂してはプロ野球選手は務まらない。

 黒原は来季に向けて懸命に取り組んでいる。日南で行われた秋季キャンプのメンバーからは外れたが、大野練習場で練習してきた。4勤で2度のブルペン投球。フリー打撃で打者とも対戦した。

 「肩は今のところいい感じです。今季は1軍で投げられなかった。2軍ですらも全然投げてない。野球選手である以上投げられないのはしんどいし、つらかった。これを来年以降どうやって生かしていけるか。ケガしているときにやった練習もそうですし、メンタル面でのことを全部、糧にして成長できたら」

 肩痛に悩まされ、誹謗中傷にさらされた。それでも黒原の心は折れることはなかった。

 「そんなに優しい世界じゃないと思っているので」

 173センチ。小柄なはずの背番号24が大きく見えた。(デイリースポーツ・達野淳司)

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