カープ矢崎 「無抵抗」「毎日座禅」でセットアッパー定着 来季の目標も達観の域
広島・矢崎拓也投手(27)は30日、マツダスタジアムでの秋季練習後、取材に応じた。プロ6年目の今季はシーズン途中からセットアッパーを務めるなど飛躍を遂げた。その裏には“無抵抗主義”と座禅という2つの大きな要素があったことを明かした。
プロ6年目の今季、矢崎が残した数字は47試合2勝0敗1セーブ、17ホールド、防御率1・82。いずれも自己最高の成績だった。
「僕自身も想像していなかった。想像を超えられたというのは誇っていいのかなと思います」
シーズン前は先発候補の一人だったが、脱落。敗戦処理からのスタートだった。3月29日・阪神戦(マツダ)で5年ぶりの勝利投手になると、5月15日・ヤクルト戦(マツダ)でプロ初ホールド、6月26日・DeNA戦(横浜)でプロ初セーブを記録。結果を残す中で次第に重要な場面での登板が増え、8月からはセットアッパーに定着した。
昨季まで通算22試合1勝3敗、防御率6・23の男がなぜここまで変われたのか?そこには心境の変化があった。
「技術的なことはあまり変わっていない。抵抗しないことをテーマに無抵抗でいこうと思った」
長く2軍生活を送ってきた。1軍昇格を言われると、不安や気負いが顔をのぞかせた。登板すれば、抑えなければいけないという思いから制球を乱し、ストライクを取りにいって打たれる。そんな悪循環を何度も経験してきた。
「その失敗の仕方は飽きた。ダメならダメで(2軍に)落ちるだけ。覚悟を決めて、しょうがないな…と思って今年はいたので。その意味では無抵抗」
すべてを受け入れる覚悟を持てば、環境の変化やポジションの変更にも動じず、流れに身を任せることができた。
そんな心境になれたのは、師と仰ぐ存在が大きいという。2年ほど前に知人の紹介で禅マインドプロデューサー・島津清彦さんと出会った。現在も2カ月に1度は禅の境地から助言をもらう。
試合前のルーティンにも変化があった。
「基本的には毎日座禅を組む。シーズン中も試合前に一人で20分くらいは組みました」
無抵抗主義と座禅でたどり着いた無の境地。来季の目標を問われると「毎年成長できたらいいと思いますけど、そこにフォーカスすることはないですね」と達観した答えが返ってきた。