【新井貴浩の目】流れ引き寄せた五回の大瀬良 新井さん評論家デビュー

 「広島5-0巨人」(29日、マツダスタジアム)

 赤ヘル4連覇への道が29日、始まった。これに合わせ、昨年限りで広島のユニホームを脱いだ新井貴浩氏(42)もデイリースポーツでの評論家デビューだ。安部友裕内野手(29)が三回に菅野から先制ソロを右翼席にたたき込み、その菅野と投げ合ったエース・大瀬良大地投手(27)が8回無失点。この大熱戦の快勝劇を、大いに語り尽くした。

  ◇   ◇

 初めて記者席から試合を見た。超満員のスタンド、そしてカクテル光線に照らされた天然芝は、すごくきれいだった。独特の雰囲気の中、開幕戦にふさわしい、手に汗握る、すばらしい試合だった。

 初めて開幕投手という大役を任された大瀬良は初回からカットボールを軸に、ストライク先行のナイスピッチングだった。開幕戦の独特の雰囲気の中で、すごく緊張したと思うが、堂々としていた。

 バッテリーを組んだ会沢もカットボールを軸に中盤以降はカーブなど緩急を織り交ぜながら、相手打者に的を絞らせないすばらしいリードで大瀬良を引っ張っていた。

 失投を一振りで決めた安部のバッティングもすばらしかった。菅野は日本でナンバーワンの投手。そう簡単に連打は期待できない。そういう投手は追い込まれたら、打ち返すのは至難の業。積極的にファーストストライクから振っていかないと厳しい。追い込まれたら何とか食らいついて、球数を少しでも多く投げさせることが大事になる。地味だが、いやらしい攻撃をみんなでやらないと、打ち崩すのは難しい。

 勝敗のターニングポイントは五回の大瀬良の投球だろう。直前の四回、菅野は無死から鈴木を四球で出し、1死から松山にも四球。菅野にしては珍しく、1イニングで2つの四球を出してしまった。カープにとって追加点がほしいところだったが無得点。そういう嫌な雰囲気で迎えた五回、大瀬良は先頭・小林にヒットを打たれた。犠打を決められ、ピンチは広がったが、それまで2安打されていた吉川尚と坂本勇を抑え、ゼロで踏ん張った。巨人に傾きそうになった流れをもう一度、カープに引き戻した大瀬良の投球は見事だった。

 丸は結果的に4三振だったが、本人の中ではボールは見えていたのではないかと思う。ストライク、ボールをしっかり見切っていたように見えた。4打席目の三振も、外角低めいっぱいにあのボールを投げた大瀬良の勝ちというだけで、丸本人も尾を引くような感じではないはずだ。

 開幕戦は自分も現役時代、何度も経験したが、何年たっても緊張する。打者は早く1本ヒットを打ちたいし、1本出るまでは不安になる。シーズンはまだ始まったばかりだが、独特の雰囲気がある開幕戦で、大瀬良が日本のエース菅野に勝ったことは大きい。いろんな意味を持つ1勝だ。ファンの方にとっても大満足の試合だったのではないかと思う。

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