関大北陽 かつての“私学7強”甲子園は07年春が最後 今年で創部100周年、令和スタイルで古豪復活目指す
アマチュア野球の話題を広く深く届ける「アマ野球のせかい」がスタート。初回は、今年で創部100周年を迎えた関大北陽(大阪)を紹介する。春夏通算14回の甲子園出場があり、かつてはPL学園などと私学7強と呼ばれたが、夏の甲子園の出場は1999年以降、遠ざかっている。古豪復活へ、歴史と伝統を残しながら、新たな挑戦にも取り組むチームの今に迫った。
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学校から自転車で数十分の場所にある練習グラウンドは右翼後方に新幹線が走る。ユニホームの胸には「HOKUYO」の文字が記され、日が暮れても部員たちは走っていた。これは数十年変わらぬ景色だが、練習方法や指導スタイルは大きく変わっていた。
いくつもの元号をまたぎ、令和のスタイルがある。辻本忠監督(49)は「半分以下ですね。練習時間も走る時間とかも」と明かした。その中で求めているのは質。「どちらかというと、やらされてることが多い。いかに自分へ落とし込めるか」。打撃練習だけでも試合を想定したり、自身の課題に向き合ったりと考えることは多い。そして、新たな戦力も加わった。
昨年4月からアナリストを募集。入部した2人の新戦力はデータ分析を中心に、練習中に動画を撮影して、部員に配布。それを移動の電車や自宅などでチェックできる環境を整えた。「今の選手はデータに基づいた根拠がいるような気がしてます」。今までになかったことだが「北陽の伝統は崩したくない。良さを継承しながら“今の選手の気質”に合った考え方を取り入れてます」とマイナーチェンジした。
厳しい言葉で指導することもなくなった。「なんで、そんな意識でやってんの?」という問いかけが指導のベース。選手から「こういう練習がしたいです」と提案してくることもある。主将が中心となって、選手間ミーティングも積極的に実施。「最初はしゃべる人が限られてたけど、いろんな選手がしゃべるようになった。ちょっと変わってきてる」。監督も小さな変化を実感している。
辻本監督にとっての転機はコロナ禍だった。学校も休校となり、2カ月間も練習ができず。夏は独自大会という形で行われた。監督は引退試合という位置づけで「楽しくやったらいい」と送り出した。すると、決勝はなかったが準決勝をコールド勝ち。「なぜ練習してへんのに、こんな野球うまいねん、と思ったんです」。自分で考え、練習をすることの大切さを部員たちから気づかされた。
今年はうれしいニュースもあった。OBの勝田成内野手(22)が広島にドラフト3位で入団。グラウンドに横断幕が掲げられている。「選手の憧れる目標として頑張ってほしい」。開幕スタメンをつかみ、開幕戦でサヨナラ打。後輩は大きな刺激を受けているはずだ。
ここ数年は悔しい結果が続いている。甲子園は99年夏、07年春を最後に遠ざかっている。大阪を勝ち抜くには、今春センバツ優勝の大阪桐蔭や強豪の履正社を倒さなければならない。ここ数年、掲げる目標は「日本一」。これは大阪代表になるには、日本一にならないといけないという思いが込められている。
「大阪桐蔭と履正社は全国でも有数の力のあるチーム。日本一を考えて練習をしないと、そこには届かない。口だけにならないよう、練習の質や自分たちの基準を上げようと常々話しています」
古豪復活へ、変革期に突入している。創部100年の節目に「日本一」のチームとなれるのか。関大北陽の勝負の夏が始まろうとしている。(デイリースポーツ・今西大翔)
◆関大北陽硬式野球部 甲子園に春夏合わせて14回出場を誇る名門。夏6回、春8回で最高成績は70年春の準優勝。90年春には4強進出。最後の出場は07年春。主なOBに岡田彰布(阪神前監督)長崎慶一(大洋ほか)井上弘昭(中日ほか)ら。
◇阪神・岡田彰布顧問(1973年入学。1年夏に左翼のレギュラーで甲子園出場)「入学した時は同学年に200人ぐらい部員がおったな。当時は厳しかったし、どつかれたりしたけど、そんなん当たり前と思っとったな。一番の思い出は3年夏やわ。大阪の決勝で興国に負けたんやけど、大鉄(現阪南大高)、浪商(現大体大浪商)、近大付って当時強かった私学とばっかり当たってな。興国は(相手が)公立ばっかりよ(笑)。0-2の九回裏に俺が最初に二塁打を打って、1アウト満塁までいったけど点取れんかったんよなあ。はっきり覚えてるわ。今も北陽の試合はタイミングが合えば見に行ってるけど、もう甲子園は07年のセンバツから遠ざかってるんか。やっぱり後輩には頑張ってもらって、また甲子園でプレーする姿を見せてほしいよな」
◇阪神・嘉勢敏弘打撃投手(関大北陽OB会長で辻本監督と同級生)「近年、甲子園に縁がないので出てほしい。甲子園に出てからプロ野球選手が出るという順番なのに、順番が逆というのが寂しい。これは辻本監督にも伝えたし、どういう形であれ甲子園出場を目標にしてほしい。OBもそれを望んでいると思う。『いいところまで』というのは飽きた(笑)。OB会としてはサポートしていくことしかできない。100年という伝統のある学校で、名門と呼ばれるのが薄れてきてる。もう一回、関大北陽でも強いなと全国的に印象づけたいという思いかな」
◇広島・勝田(22年卒)「自分たちはコロナ禍で行事がほとんどなくなってしまいました。独自大会は2年の時です。3年生の方に『おまえの経験のために出ていいから』と優しい言葉をかけてもらったのを覚えています。気持ちで負けちゃいけないということを教わりました。気持ちでは人に負けないという自信があります。1年から試合に出て、いろんな経験をさせてもらいました。それが今の自分の経験や糧になっていると思います」
◇丸山聖主将(3年)「100年っていう記念の年にキャプテンをやらせてもらって、このチームでできるっていうことに感謝の思いはすごく感じています。目標は日本一。そのためにも何か変えないといけないと思ったので、自分たちで練習メニューを考えて、一つ一つの練習に意図を持つということをしています。今年のチームは仲が良くて、やると決 めれば全員でいける。その良さを出していきたい」
