巨人・長嶋茂雄終身名誉監督 自身に並んだ坂本186回目の猛打賞見届けた 大歓声「長嶋コール」に左手上げ笑顔
「巨人8-5阪神」(3日、東京ドーム)
「4番・サード 長嶋」のアナウンスがドームに響く。車いす姿のレジェンドがグレーのスーツに身を包み、大歓声には何度も左手を上げて笑顔で応えた。割れんばかりの「長嶋コール」。代名詞となった「勝つ!勝つ!勝~つ!」のフレーズを、ナインが特別な伝統の一戦で体現した。突破口を開いたのは巨人・坂本勇人内野手だ。
初回、2死から吉川が右中間を破った。得点圏に進むと、岡本和が四球を選び一、二塁。ここで坂本が打席に立った。長く長嶋氏が守ったホットコーナーに、今季から本格的に転向したベテラン。1ストライクから2球目、絶妙なバットコントロールでフォークを拾った。
「今の日本のプロ野球人気を築いてくれた。毎日、何万人というお客さんの前でプレーできるのも、そういう方々のおかげだと思う。改めてすごいなと思いました」
見えない力に後押しされたように、先制点を奪うと後続もつながった。長野、小林、門脇と4連打で4得点。今季最多の初回得点で、阿部監督も「今年初っていうくらいつながった。いい攻撃でしたね」と呪縛から解かれた打線を評価。坂本は五回に右翼線二塁打、八回に右前打と今季2度目の3安打で、通算186回目の猛打賞。記念の一日に長嶋氏の記録に肩を並べ「光栄なこと。素直にうれしいです」と笑みを浮かべた。
球団創設から90年、栄光の歴史をつないできた巨人軍。時代を彩った長嶋氏の記念試合に、愛弟子の松井秀喜氏も駆けつけた。3連敗で迎えた試合前には「こういう時は実績のある選手が打破してね。坂本くん、岡本くんに、頑張って欲しい」とゲキを飛ばしたが、名指しした2人が快音を残した。長嶋氏は昨年も、不振に陥った坂本を直接指導。長嶋氏から松井氏、阿部監督、坂本…とDNAは受け継がれている。
五回終了時、長嶋氏と並んでセレモニーに登場した阿部監督は「今日は勝てとカツを入れられました」と笑った。首位・阪神を倒して連敗は3でストップ。坂本は言う。「これからもっと、もっと状態を上げていかないといけない。1本でも多く打てるように頑張りたいですね」。栄光の記憶と記録をつなぐため、勝利を導くためにバットを振る。
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長嶋茂雄終身名誉監督「読売巨人軍は本年、球団創立90年を迎えました。ご観戦の皆さま、全国の野球ファンの方々と共に心から祝福したいと思います。1世紀に近い年月の中、多くの先輩、同輩、そして若い世代の人たちに支えられて築かれた球団の歴史です。
私も巨人に入団して半世紀を過ぎました。自分自身の足跡を振り返っても、さまざまな喜怒哀楽が詰め込まれています。
今シーズンは阿部監督のもと、レギュラーを死守するベテランとチャンスを狙う中堅、さらに若手を含めた戦う集団です。創立90年の年、巨人が日本一の座を目指す戦いを見せてくれると期待しています」