前オリックス・吉田凌 トライアウト→入団テストでロッテ育成から再起 ファンの声が支え「この立場になって」改めて実感

 今季限りで慣れ親しんだチームに別れを告げ、新たな挑戦を始める男たちの思いを伝える「第2の人生へプレーボール」。オリックスの来季戦力構想から外れ、12球団合同トライアウトと入団テストを経て、ロッテに育成選手としての入団が決まった吉田凌投手(26)が、戦力外通告を受けた時の心境を明かした。トライアウトまでの胸中や葛藤、自らを奮い立たせてくれた存在なども語った。

  ◇  ◇

 10月27日の午後6時ごろ、スマホの着信音が鳴った。「次の日、球団施設に来てくれ」。球団関係者からの電話だった。兵庫県内の自宅にいた吉田凌は頭が真っ白になった。「知らん番号からほんまに急ですよ」。心の準備はできていなかった。

 「まだ大丈夫かなと。あと1年、2年、そこで結果を残せばと思っていましたから」。すぐに妻と2人きりでの話し合い。切り替えと決断に多くの時間はいらなかった。「トライアウトに向けて頑張ろう」。妻からの激励にも背中を押されて、再び走り出した。

 クビを告げられてからも、毎日のように2軍施設で練習。11月15日のトライアウトで結果を残すため、後悔はしたくなかった。家族や恩師もポジティブな声をかけてくれる。その中でも、一番の支えになったのがファンのメッセージだった。

 「まだまだ投げてる姿を見たいです」「8年間、オリックスのために投げてくれてありがとうございました」「違うチームに行っても応援します」

 SNSに届いたのは激励や感謝の言葉。「改めてファンの方々の言葉は選手にとって大きいなと、この立場になって感じました」。右腕を振り続ける理由が見つかった。

 21年にはポストシーズンでも活躍。自慢のスライダーを武器に内外への投げ分けで勝負してきた。今季も1軍では19試合に登板し、防御率3・24。ファームでは30試合登板で防御率1・95と好成績を残してきた。ただ、ここ2年は精神的にも苦しかった。

 チームの中継ぎは守護神の平野佳を筆頭に山崎颯や宇田川ら粒ぞろい。「12球団で1番、2番を争う中継ぎ陣なので。その中でやれたのもうれしかったですし、競っていくのは本当にしんどかったですね」。下からの突き上げを感じ、自らの調子も上がらない。「きつかった」と本音をこぼした。

 それでも、このまま負けるわけにはいかない。両親も見守ったトライアウトでは、打者3人から2三振と結果を残した。数日後にはロッテから入団テストの声がかかった。「まだ頑張りたいという思いは消えていない。やれるだけやりたい」。これ以上ないチャンス。表情からは闘争心を感じさせた。

 そして、育成選手として契約。もう一度、プロ野球選手としてプレーすることになった。2歳の娘もいる。京セラドームがテレビに映れば「行きたい、行きたい」。登板すれば「パパ、パパ」と喜んでくれる。「ちゃんとわかるぐらいまでやりたいというのは、一つのモチベーションですね。もう一回頑張りたいとより一層、思えたので」。父として、一野球人として、再び輝く姿を届けたい。

 ◆吉田 凌(よしだ・りょう)1997年6月20日生まれ、26歳。兵庫県西脇市出身。181センチ、80キロ。右投げ右打ち。中学時代は兵庫北播シニアに所属し、2年冬にシニア日本代表選出。東海大相模では3年夏に小笠原(現中日)との二枚看板で選手権大会優勝。2015年度ドラフト5位でオリックス入団。NPB通算83試合に登板し、4勝5敗17ホールド、防御率3・70。

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