奥尻島から46年ぶりプロ野球選手誕生 大先輩・佐藤義則氏「私の165勝を追い越してほしい」

 今秋ドラフトでヤクルトに4位指名を受けた入団した坂本拓己投手(18)は北海道・奥尻島出身。同島からのプロ野球選手誕生は阪急、オリックスで活躍した佐藤義則氏(68)=デイリースポーツ評論家=以来、46年ぶり2人目。佐藤氏は「もう奥尻島からプロ野球選手は出ないと思っていたのでうれしい。頑張ってほしい」とエールを送った。

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 北海道の南西部に位置する奥尻島。佐藤氏は「島で野球を続けるのは本当に大変」と話す。「とにかく冬の間は雪で野球が一切できないからね。自分の頃は室内練習場なんてものもなかったら、雪の上でいつもサッカーボールを蹴ってたよ」。冬が終わっても別の問題がある。「島の中で対戦チームを見つけることが難しい。限られた人しかいないわけだから。練習だけじゃ、なかなか上達しない。やっぱり試合をしないとね」。佐藤氏が本格的に野球を始めた中学生の頃は、島に駐屯する自衛隊のチームや役場の人たちがつくったチーム、漁師たちのチームと対戦していたという。「大人と対戦するわけだから意外といい練習になっていたかもしれないね」

 しかし、最盛期には約8000人いた島民も、その後は過疎化が進み、現在は約2400人まで減った。坂本は練習試合もままならない厳しい環境の中でもプロ野球選手への夢を膨らませた。島には佐藤氏の現役時代の功績をたたえた展示館があり、坂本も「2度くらい見学に行った」という。「いろんな賞を取って本当にすごい方だと思いました」。大先輩の存在が大きな励みになっていた。

 佐藤氏は高校から島を出て、函館有斗高から日大を経て1976年ドラフトで阪急に1位指名された。坂本も島を離れ、知内高(北海道上磯郡)に進学し、プロの夢を叶えた。佐藤氏は「もう奥尻島からプロ野球選手が出ることはないと思っていたからね。同じ島出身者として本当にうれしい」と喜んだ。

 映像で坂本の投球を見た印象については「スピードもあるし、いいものは持っていると思う。左投手という利点もある」と語る一方で「まだ我流で投げている感じ」と課題も指摘した。「プロの世界はすごい投手がいっぱいいて、ライバルも多い。そこを勝ち抜いていくのは簡単じゃないけど、もっともっと努力して強い気持ちで頑張ってほしい」とエールを送った。

 佐藤氏は阪急、オリックスのエースとして通算165勝をマークした。95年には当時の最年長記録となる40歳11カ月でノーヒットノーランも達成し、44歳で引退した。「島出身というハンデはあっても頑張れば、ここまでやれるということ。坂本君にとっていい目標になってくれれば。私は大学からの入団だったけど、彼は高校からの入団。私の165勝を追い越すぐらいの活躍を見せてほしい」と期待を寄せた。奥尻島民の大きな後押しも受けて18歳左腕がプロの世界へ歩み出す。

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