オリックス・能見「一つも悔いはありません」 145キロストレートで有終K斬り

 ナインに胴上げされる能見(撮影・高部洋祐)
 力投する能見
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 「オリックス4-3ロッテ」(30日、京セラドーム大阪)

 ありがとう、能見さん-。今季限りで現役を引退するオリックス・能見篤史投手兼任コーチ(43)の引退セレモニーが30日、京セラドームでのロッテ戦後に行われた。試合では同点の八回にマウンドへ上がり、安田を空振り三振に仕留めた。引退セレモニーでは「一つも悔いはありません」と話し、崖っぷちで踏みとどまった優勝争いへの思いも語った。

 割れんばかりの拍手がドームに響き渡る。能見が首脳陣やナインに見届けられ、マウンドへ向かった。「能見を信じて」-。長年愛した登場曲と「優しい拍手をいただいて、自然と入れた」。準備はできていた。

 出番は同点の八回無死。記念登板ではない。正真正銘の真剣勝負だ。打席には4番・安田。「練習はしていた」と“世界一美しいワインドアップ”から放たれる140キロ中盤の直球で、全盛期と変わらぬ姿をファンの脳裏に刻んだ。

 最後は145キロのストレートで空振り三振。磨き続けた糸を引くようなアウトローに「キレはないですね」と苦笑いしたが、43歳の衰えは感じさせなかった。

 客席には阪神時代のユニホームも掲げられた。3万1442人が拍手を送る。中嶋監督も自らマウンドへ歩を進め、ねぎらった。代名詞のポーカーフェースでベンチへ。帽子を取って観客にお辞儀した。チームも劇的なサヨナラ勝利。ベンチから飛び出し、勝利の輪に加わった。

 この日も人柄が詰まった一日だった。「今日で終わりじゃないからね」。“引退試合”ではない。逆転優勝を目指す戦力として、マウンドに立ちたかった。コーチとしての仕事も変わらない。試合前の円陣では、声だしも担当し「さあ、いこう!」と士気を高めた。

 引退セレモニーでは、言葉に詰まる場面も。記憶が飛んでカンペを取り出し、笑わせた。「頑張って覚えてたんですけど…。失敗するのも僕らしいな」。ただ、涙はない。その理由は明確だった。

 「一つも悔いはありません。やりきりました」

 それでもまだ、能見の夢は終わらない。「選手兼任コーチとして、サポートして全力を尽くします」。奇跡の逆転V、そして悲願の日本一へ-。現役ラストシーズンを駆け抜ける。

 ◆能見 篤史(のうみ・あつし)1979年5月28日生まれ、43歳。兵庫県出身。180センチ、74キロ。左投げ左打ち。投手。鳥取城北から大阪ガスを経て、2004年度ドラフト自由枠で阪神入団。プロ1年目の05年4月3日・ヤクルト戦(大阪ドーム)で初登板初先発。21年からオリックスで投手コーチを兼任。最多奪三振(12年)。13年WBC日本代表。

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