近江・山田165球熱投&V撃 緊急代替出場ドタバタも逆転タイブレーク星

 「選抜高校野球・1回戦、近江6-2長崎日大」(20日、甲子園球場)

 コロナ禍に見舞われた京都国際に代わって緊急出場した近江(滋賀)は、延長十三回タイブレークの末に長崎日大を下した。プロ注目で主将の山田陽翔投手(3年)が、165球の熱投&決勝適時打と大黒柱の働きで準備もままならなかったチームをけん引。センバツ出場代替校の初戦突破は、1992年の育英以来、30年ぶりとなった。

 試合終了の瞬間、山田は静かに右拳を突き上げた。延長十三回を1人で投げ抜き、つかんだ待望の勝利。今春はこのマウンドに立てないと思っていた分だけ、三塁側スタンドから注がれる拍手にうれしさが込み上げた。

 「自分たちの目標は日本一なので。それに向けていい第一歩が踏み出せました」

 まさに大黒柱の働きだった。立ち上がりから安定感ある投球を披露。六回に2者連続適時打を浴びて2点を先制されるも、リズムを崩すことはなかった。これが2点ビハインドの九回、“あと1球”の崖っぷちから追いつく原動力になった。

 そして延長十三回、今大会初めて無死一、二塁から攻撃が始まるタイブレークに突入すると、バットでも勝負強さを発揮。「どんどん振っていこうと決めていた」と、先頭で初球を捉え、鋭い打球が左前へ抜けた。二塁走者が一気に生還して勝ち越しに成功。以降も相手のミスに乗じて一気に4点を奪い、試合を決めた。

 新型コロナウイルス集団感染のため出場を辞退した京都国際に代わっての出場。試合までの準備期間はわずか3日だった。山田は対外試合解禁後、登板は1試合のみ。それでも聖地のマウンドでは調整不足の影響を全く感じさせなかった。

 今大会最速の146キロをマークするなど、13回を投げて7安打、10奪三振、2失点。多賀監督は「京都国際のエースの森下君と山田は仲がいい。山田は森下君の無念の思いを胸に持ち、気持ちのこもった熱投だった」と称賛を惜しまない。

 この日、チームは宿舎の手配もできず、午前6時半に滋賀県彦根市を出発して甲子園に乗り込んだ。「普段はバスで寝てしまうんですけど、今日はどこかワクワクが勝っていたのでバチバチでした」と山田。緊急出場から目指す春の頂点へ。近江の中心には頼もしい主将がいる。

 ◆山田 陽翔(やまだ・はると)2004年6月9日生まれ。17歳。滋賀県栗東市出身。174センチ、82キロ。右投げ右打ち、投手兼外野手。小1から治田西スポーツ少年団で野球を始め、栗東西中では大津瀬田ボーイズに所属。近江では1年夏からベンチ入りし、2年夏に甲子園出場。最速149キロ。50メートル走5秒8、遠投100メートル。

 ◆代替出場校の初戦突破 センバツの代替出場は近江が13校目で、初戦を突破したのは1992年の1回戦で育英が駒大岩見沢を8-0で破って以来、30年ぶり4校目。35年・中京商(現中京大中京)、52年・長崎商も初戦突破。夏の選手権では39年・早実が初戦を突破している。

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