水島新司氏が死去 ドカベン、あぶさんは永遠に 野球界の歴史変えた名作漫画の巨匠

 水島新司さん(C)水島プロダクション
 「ドカベン」の山田太郎ら(C)水島プロダクション
 甲子園球場で新潟明訓を応援する水島新司さん(左)と香川伸行さん=1991年8月
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 「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩」などの野球漫画で知られる漫画家の水島新司氏が10日、肺炎のため東京都内の病院で死去したことが17日、分かった。82歳。新潟市出身。葬儀は家族のみで行った。喪主は妻修子(しゅうこ)さん。半世紀以上にわたり漫画を通して野球界に多大な影響を与え、高校野球ではドカベンのワンシーンが甲子園で現実に起こるなど、球界の発展に大きく貢献した。

 漫画で野球界の歴史を変えたと言っても過言ではない巨匠が、この世を去った。18歳で漫画家デビューを果たした水島氏は、子どものころから大の野球好きで、1970年に剛速球投手の藤村甲子園を主人公にした「男どアホウ甲子園」で人気を得た。

 女性投手の水原勇気が変化球を武器にプロ野球で活躍する「野球狂の詩」、山田太郎ら「明訓高校」の個性的な球児たちが甲子園で戦う「ドカベン」、大酒飲みの強打者、景浦安武がパ・リーグでプレーする「あぶさん」。名作の登場人物が一堂に会する「大甲子園」など、数多くの名作を生み出した。

 甲子園で活躍した浪商・香川伸行氏は山田太郎と体形が似ているなどとして「ドカベン」の愛称で親しまれ、水原勇気に憧れて野球を始める少女が増えるなど球児らに大きな影響を与えた。

 ドカベンの「プロ野球編」や「スーパースターズ編」などでは実在の選手を漫画に多く登場させ、多くのプロ野球ファンが歓喜。18年にシリーズ大団円を迎え、20年12月1日を持って漫画制作からの引退を発表した。半世紀以上にわたって描かれた水島作品では、ルールブックの“盲点”とされる部分に着目して切り込んだこともあり、実際に現場の指導者や選手が受けた影響は計り知れない。

 また野球界の発展にも寄与し、06年には北信越地方に野球の独立リーグを発足させようと、アドバイザーに就任。「雪国では育たないと言われる野球だが、漫画や人脈を生かしてできる限り協力していきたい」と会見で語っていた。

 現在ではルートインBCリーグとしてプロを目指す若い選手たちの受け皿となっている。また故郷のBC新潟は昨年の日本一監督になったヤクルト・高津監督が選手兼任監督として指導者人生をスタートさせるなど、水島氏の尽力が今日の野球界を支えてきた。

 新潟県中越地震の復興支援にも力を注ぎ、05年に紫綬褒章、14年に旭日小綬章を受賞。幼少期から野球に魅せられ、愛する野球のために、漫画だけでなくさまざまな形で大きな功績を残してきた水島氏。その足跡は間違いなくすべての野球人の心に残り、次代へと受け継がれていく。

 ◆水島 新司(みずしま・しんじ)1939年4月10日生まれ。新潟市出身。58年に漫画家デビュー。70年に藤村甲子園を主人公にした「男どアホウ甲子園」で人気に。以降、「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩」などのヒット作を連発し野球漫画の第一人者に。また、マスターズリーグの「福岡ドンタクズ」に入団したほか、北信越BCリーグのアドバイザーを務めるなど野球振興に尽力した。2005年に紫綬褒章。14年に旭日小綬章。

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