【野球】「ドカベン」岩鬼が「やーまだ」と呼ぶモデルがいた 南海元監督の親分口調

 ON対決となった日本シリーズの試合前に談笑する水島新司さん(左)とダイエー・王貞治監督=2000年10月
 鶴岡元監督から「やーまだ」と呼ばれていた山田治之さん
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 2021年野球殿堂入り表彰者が発表され、特別表彰でアトランタ五輪野球日本代表監督の川島勝司氏と野球史を伝える作家の佐山和夫氏が選出された。プレーヤー表彰、エキスパートは23年ぶりに該当者なしとなった。野球を題材にした作品で知られる漫画家の水島新司さん(81)は、昨年12月1日に引退を発表しするとともに19年から野球殿堂特別表彰での候補者入りしていたが21年は候補者辞退していた。

 水島さんの代表作の一つ「あぶさん」は、1973年から2014年までビッグコミックオリジナル(小学館)で連載された。日本シリーズ4連覇で今や球界の盟主ともいえるソフトバンクの前身、南海ホークスをスタートにダイエー、ソフトバンクを舞台にした漫画だ。架空の代打男「あぶさん」こと景浦安武を主人公に実在するプロ野球の監督、選手そして裏方が登場するストーリーは、日本で最も長く連載が続いたスポーツ漫画だ。

 加えて「野球狂の詩」や「ドカベン」の代表作も人気で、水島さんは野球界発展に大きく寄与し、20年まで野球殿堂特別表彰での候補者となっていた。いずれの漫画も人気を博した理由に水島さんの現場での綿密な取材がある。

 1972年から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載が開始され、76年からアニメ化もされた「ドカベン」は、主人公の「ドカベン」こと山田太郎や岩鬼正美、殿馬一人、里中智ら架空の人物が登場して高校野球での活躍を描いている。

 架空の人物だが、岩鬼が山田を「やーまだ」と独特のイントネーションで呼ぶのは、通算23年にわたって南海の監督を務め、歴代1位の1773勝を挙げた鶴岡一人氏(故人)の親分口調をまねていた。

 「水島新司さんはよく大阪球場に遊びに来ていた。ある時、鶴岡さんから呼ばれたときに、水島さんが『これでいこう』と言われた。何のことかなと思ったら、数年後にドカベンがはじまって分かったんです」

 こう証言するのは、67年から70年まで南海に在籍した山田治之さん(74)だ。山田さんは名古屋電気高(現愛工大名電)から64年に広島に入団し、67年から南海でプレーした右打ちの捕手兼外野手。山田太郎のモデルではないが、岩鬼がドカベンを呼ぶ「やーまだ」のモデルとなった。「鶴岡さんにはお世話になった。鶴岡さんから『やーまだ』と呼ばれていたから、野球を辞めてドカベンを見たときはうれしかった」と懐かしそうに話した。

 7年のプロ生活で通算17打数2安打、70年限りで現役を引退した山田さんは、ユニホームを脱いでからは広島でサラリーマン生活を経て現在は自身で商売をしている。その一方で広島カープOB会の世話役も務めている。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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