「継続試合」導入へ物議を醸した無情の一戦 大阪桐蔭VS東海大菅生がもたらしたもの

 デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。最終回となる今回は、長雨に見舞われた今夏の甲子園で、無情にも八回途中降雨コールドゲームとなった大阪桐蔭-東海大菅生戦をピックアップ。「継続試合」の導入へ物議を醸した一戦を、アマチュア野球担当の永井優花記者(25)が振り返ります。

  ◇  ◇

 視界が悪くなるほどの激しい雨の中、山口球審から試合終了を聞いた大阪桐蔭と東海大菅生のナインは、ベンチで唇をかみ締めた。

 「雨を嫌がった方が負けだと言っていた。最後までやって勝ちたかったが、最後の方は野球にならなかったので致し方ない」。大阪桐蔭の西谷浩一監督はそう選手たちを納得させたが、やるせなさを隠しきれなかった。

 異常気象による順延続きで、当初の試合予定から4日遅れで迎えた両校の初戦。序盤から大阪桐蔭に3本塁打が飛び出したが、七回に東海大菅生が追い上げるなど、強豪対決にふさわしい展開に。ただ、五回あたりから雨脚が強まり、あっという間にグランド一面が水浸し。両チームの投手はぬかるんだマウンドに足を取られ、何度もバランスを崩した。

 東海大菅生が3点を追った八回の攻撃では、1死一塁から本田峻也投手が打席へ。スイングした際、バットが滑ってすっぽ抜けたアクシデントに続き、遊撃への凡打かと思われた打球は水たまりの影響でストップ。内野安打となり、1死一、二塁と同点も見えかけたところで中断。32分が経過後、無念の降雨コールドで幕を閉じた。

 大阪桐蔭の池田陵真主将は「相手の気持ちも考えて戦っていく」と前を向くしかなく、東海大菅生の本田も「ウソだろ…と思ったけど、現実を受け入れるしかない」と言葉を絞り出したが、ともに悔しさに顔をゆがめた。

 だが、この両ナインの懸命な姿が「継続試合」の導入へ物議を醸すきっかけとなった。試合後には日本高野連がオンライン会見を開き、「投手の障害予防や球数制限などさまざまな課題が出ている。昨年から協議を続けてきた継続試合を含めて、検討していきたい」と説明した。

 12月から新会長に就任した宝馨会長も「幻のホームランとか奪三振とか、選手のプレーが無駄にならないようにしたい。早急に検討をするべき」と前向きな考えを示した。今後、本格的に協議を進められていく。

 今回はこの一戦が一石を投じる結果となったが、近年は「投手の1週間500球の球数制限」や「タイブレーク制の導入」など、故障予防や身体的な負担軽減を目指して、さまざまな改革が続いている。青春時代を野球に懸ける球児たちが常に全力でプレーできるよう、明るい方向へ進んでいってほしい。

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