日本ハム・伊藤、新人2桁星への転機だった悔し涙 プロ初黒星喫した4・7ソフトB戦

 東京五輪決勝の対米国戦でピンチを切り抜けた伊藤は手を叩いて喜ぶ
 4月7日のソフトバンク戦、7回を11奪三振3失点もプロ初黒星となった伊藤
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 デイリースポーツ記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」は、日本ハム担当・島田敬将記者(32)が、伊藤大海投手(24)がプロ初黒星を喫した4月7日・ソフトバンク戦(札幌ド)を回顧します。チームが5位に沈んだ中、球団新人では06年の八木以来となる10勝をマーク。新人特別賞を受賞した右腕の奮闘ぶりを象徴するシーンがありました。

  ◇  ◇

 試合終了後のベンチには、たった一人。ぼうぜんとグラウンドを見つめる伊藤の目からは、時折り涙がこぼれた。球団初の北海道出身のドラ1右腕にとってプロ2度目の登板は、あまりに酷な展開だった。

 1点リードの七回。味方の失策に足をすくわれた。1死一、三塁から中村晃に投ゴロを打たせると、併殺狙いで二塁へ送球。三塁側にわずかにボールがそれ、遊撃・中島が捕れず同点に(記録は中島の失策)。続く松田に決勝の左越え適時二塁打を浴びた。7回4安打3失点(自責2)、11奪三振。新人としては満点に近い投球だったが、勝利はつかめずプロ初黒星を喫した。

 チームはこの試合まで開幕から9試合で1勝6敗2分け。本拠地でも6試合を戦って勝ちがなかった。重圧を感じないわけがなかった。「何とか連敗を止めたいという気持ちでマウンドに上がった。やり切れなかったのはすごく悔しい。粘り切れない、勝ち切れない自分の甘さが出た」。試合後の伊藤の目には、まだ涙がうっすら残っていた。

 だが、これが転機だったのかもしれない。伊藤が持つ本来の闘志、闘争心がかき立てられた。「あそこまで本気で悔しく思えたのは本当に久しぶりの感覚だった。いい経験をさせてもらっていると感じながら、『また次頑張ろう』と切り替えはできた」と振り返っている。

 その後も味方の失策や救援失敗に阻まれ、ようやく初白星をつかんだのは初登板から5試合目の4月28日・ソフトバンク戦(ペイペイ)。その間も「メンタルだけは強いので」と自分の仕事に徹し、毎試合でクオリティースタート(6回以上を投げて自責点3以下)を続けていた。

 栗山前監督は右腕が持つ類いまれなる資質をこう表現している。「一人でいろんなことを考えてやってきたんだなって。そのレベルも高い。10年くらい(プロで)やっている感じに見える」。駒大苫小牧から東都大学野球連盟の名門・駒大に入学するも半年で退学。翌春に苫小牧駒大に再入学したが、規定で1年間は公式戦出場が停止となった。その間に自分と向き合い、肉体と技術を鍛え上げた経験が生きた。

 プロ1年目はスタートにつまずいたが、終わってみれば23試合で10勝9敗、防御率2・90。8月の東京五輪では侍ジャパンの一員として金メダル獲得にも貢献し、大舞台での強心臓っぷりも見せた。

 今季、チームの454得点、78本塁打、打率・231はいずれもリーグ最下位と打線の援護が望めなかった。そんな中で奮闘した伊藤は、メンタルも技術も一回り成長した。来季は一層勝ち星を重ねるだろう。

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