「スパルタ式」指導への賛否 名伯楽・内田順三氏の考えは

 スポーツ界におけるパワハラ行為や体罰など、指導者のいき過ぎた言動に厳しい視線が注がれる時代。野球界ではかつて当たり前だった「スパルタ式」の練習に賛否の声が挙がることもある。選手を育成するうえで、指導者として大切な要素は何か。数多くの強打者を育て、名伯楽と呼ばれた内田順三氏(前巨人巡回打撃コーチ)に聞いた。

  ◇  ◇

 昔の指導者は絶対的な権力を持っていたし、厳しく指導する「スパルタ式」は当たり前だった。今は時代とともに変わりつつあるとは思うが、間違ったやり方というのは指導者が感情的になり、怒って強制的にやらせてしまうようなケースだよね。

 先日も、巨人のファームで阿部2軍監督の“罰走”が話題になっていた。彼の性格をよく知っているが、感情的になって走らせているということは絶対にない。ではなぜこうした練習を追加するのかというと、選手へメッセージを送りたいから。悔しい思い、勝負への執念を植えつけるにはそういったことも必要。阿部自身がそうだったように、心の強い選手を作りたいのだと思う。ひとつ付け加えるなら、こうした練習をした後は他のコーチがその意図を説明したり、誰かがフォローしたりすることも必要だよね。

 練習時間に関しては長くやらせればいいというものではない。ダラダラやると手抜きが出てくるし、7割くらいの力でやっても効果はない。自分が指導した巨人でも広島でも、最近のキャンプでは5時間をテーマにやっていた。5時間の全体練習が終わったら、あとは個人練習だった。

 ただ、ファームの若手のように形を作らなければいけない選手というのは、こちらから引っ張ってやらせることは出てくる。自分はよく「習うより、慣れろ」と言っていたが、100回で覚える選手もいれば、1000回やってようやく身につく選手もいた。投手の肩は消耗品で無理はさせられないが、野手は振り込む、走り込むことはスイングスピードを上げるために必要なこと。今は科学的なデータを集めて技術を上げようと取り組んでいるが、数値を上げるにはやはり、数をこなす練習もやらないといけない。

 オチ(落合博満)だってキャンプでは独特な練習法で打撃マシンを繰り返し打っていたし、山本浩二さんも調子が悪くなればアメリカンノックで下半身を徹底的に鍛え直していた。

 指導者はいかにいい習慣を身につけさせてやるか。素質は持って生まれたもので鍛えることは難しいが、感性は心がけで鍛えることができるからね。選手が自分で考えて課題を克服できるように導いてやることが、指導者として大切なことだと思う。

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