山梨学院・椙浦は笑顔のムードメーカー 得意のラップでナインをアゲアゲにした夏
「全国高校野球選手権・1回戦、熊本工3-2山梨学院」(10日、甲子園球場)
「まだまだ、こっから!」。三塁ベンチ内の最も左翼寄り、仲間からよく見えるいつもの定位置で、声がかれるまで叫んだ。
山梨学院のムードメーカー・椙浦元貴捕手(3年)は、ベンチの中で最後の夏を終えた。両者一歩も引かず、延長十二回までもつれこんだ大激戦。守って守って、何度もピンチを切り抜けたが、勝利には届かなかった。椙浦は泣き崩れるナインに誰よりも早く駆け寄り「ナイスプレー!」と健闘をたたえた。
「みんな、本当によくやってくれたので、悔いはないです」。山梨大会で背負った背番号「2」は後輩の背中にあった。正捕手を目指し懸命に努力を重ねたが、聖地に立つことはかなわなかった。それでも、椙浦は「(試合に)出ても出なくても、自分の役割はチームを笑顔にすること」と腐ることなく、ムードメーカーに徹した。
大親友の野村とは苦しい時も「甲子園に行こう」と励まし合ってきた。今大会前は得意のラップで“野村愛”を歌い上げ、緊張をほぐす手助けをした。「この高校であいつと野球ができてよかったです」と照れ笑いした。
卒業後はトレーナーの資格を取得し、野球に関わる仕事に就く希望を持っている。最高の仲間との思い出を胸に、新たな夢へのスタートを切る。