済美・山口直、悔いなし完投負け「怖かった。でも楽しかった」
「第100回全国高校野球選手権・準決勝、大阪桐蔭5-2済美」(20日、甲子園球場)
王者を倒すことはできなかった。11安打5失点(自責点3)で準決勝敗退。14年ぶりの決勝進出が夢に終わっても、済美(愛媛)のエース・山口直哉投手(3年)はいつもと変わらない表情で口を開いた。
「大阪桐蔭は想像以上の打線で怖かった。でも、自分の投球はできた。楽しかった」
真っ向勝負を貫いた。同点の五回。1死一、二塁のピンチで相手4番・藤原を3球三振に仕留めた。初球がチェンジアップ、2、3球目はスライダー。「日本を代表する打者を三振に抑えれば、自分に勢いがつくと思った」。ドラフト上位候補の強打者から、狙って奪った三振だった。
しかし、続く5番・根尾への四球で2死満塁とピンチを広げ、6番・石川に勝ち越し適時打を浴びた。さらに捕逸などミスが絡んで3点を献上。2回戦・星稜戦のようなミラクルは起こせなかった。
愛媛大会開幕前、済美ナインは両親と手紙を交換した。準優勝した13年センバツ前にも行った、感謝と決意を伝えるための“儀式”だ。「みんなと野球ができるのも最後。後悔しないように楽しんで」。母・かおりさんがつづった言葉に、寡黙なエースは「今まで迷惑をかけてきた分、死ぬ気で頑張ります」と返したという。
愛媛大会初戦から10試合で計1127球。リリーフに回った準々決勝・報徳学園戦以外は、モットーの「先発完投」で快進撃を支えた。死力を尽くした最後の夏。「悔しさより、ありがとうという気持ちの方が強いです」。身長171センチのタフネス右腕は、しっかりと前を向いて甲子園を去った。