岐阜経済大、バイク事故死の部員に贈る初勝利 指揮官も声を詰まらせ「彼のために…」

 「全日本大学選手権・2回戦、岐阜経済大1-0石巻専大」(6日、東京ドーム)

 初出場の岐阜経済大が、初戦の2回戦を突破して8強に進出した。主将の与座海人投手(4年・沖縄尚学)が1安打完封。2014年5月に事故死した中野宏紀さん(享年18歳)にささげる全国大会初勝利となった。

 与座は勝利の瞬間、力強く右拳を握りしめた。ボテボテの内野安打1本に抑える1安打完封。志半ばで天国へ旅立った同級生の思いを背負い、111球を投げ抜いた。

 「亡くなった時は悔しかったけど、(投手だった)中野の分も、と思ってやってきたので。勝ててよかった」

 2人は1年春からリーグ戦に登板。与座が八回、中野さんが九回を任されていた。中野さんは直球の最速が140キロ台を掲示し、将来はプロ入りも期待できる好投手だった。与座は「自分たちと比べると頭一つ抜けた投手だった」と振り返る。

 しかし、中野さんは同リーグ戦中の14年5月2日にバイクで事故に遭い、同10日に帰らぬ人となった。

 以来、岐阜経済大は中野さんの背番号15を永久欠番として、公式戦はベンチにそのユニホームを掲げてきた。公式戦では登板前の投手、守備に就く前の野手が、背番号15のユニホームに触れ、グラウンドに向かう。小森監督は「(中野さんは)チームの守り神ですね」。選手は亡き戦友の思いを胸に刻み、大学創立50年目の今年、念願の全国大会出場を果たした。

 全国大会の初陣となった石巻専修大戦。東京ドームの一塁ベンチにはいつも通り背番号15のユニホームが掲げられていた。試合前には選手が一層、奮い立つ出来事もあった。

 中野さんの母親は、息子が生前に利用していた携帯電話を今も所持しており、ラインの登録名は「中野宏紀」のままで、節目に野球部員のライングループへメッセージを書き込む。石巻専修大との試合前にも「頑張って」と選手を激励のメッセージを送った。

 ナインが奮起しないはずがなかった。試合は五回まで0-0。それでも六回に中野さんの同期、山田拓海内野手(4年・岐阜城北)が右前適時打で先制点をたたき出すと、与座が1点を守り抜いた。

 小森監督は試合後、声を詰まらせた。「みんなが中野の分までという気持ちでやっている。今日は彼のためにどうしても勝ちたかったので…」。亡き教え子の同級生とつかんだ全国大会初勝利を心から喜んだ。

 ただ、誰も1勝で満足する様子はない。昨年は東海地区大学野球連盟の代表・中京学院大が、全日本大学選手権で初出場初優勝を果たしている。「僕たちは中京学院大を倒せばいけると思ってやってきた」と与座。中野さんに胸を張って報告するためにも、まだまだ負けられない。

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