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桐光学園・松井の気になる課題とは…

 今年もプロを目指す野球選手にとって「運命の日」と呼ばれるドラフト会議が迫っている。今回の一番の目玉選手は桐光学園・松井裕樹投手である。2年生エースとして臨んだ昨夏の甲子園、今治西との1回戦で10者連続を含む22奪三振という大会新記録を樹立し、一躍注目を集めるようになった。その後は今春、今夏と甲子園出場を逃し、再び全国舞台に姿を見せることはなかったが、プロの高い評価は変わっていない。

 切れ味鋭いスライダーは言うに及ばず、投手の基本である直球も最速149キロをマーク。最終学年では新しくチェンジアップも加えて、投球の幅を広げた。公式戦だけでなく、最後の夏前には強豪校相手の練習試合でも奪三振数と視察したスカウトの称賛する声がさまざまなメディアで大きく取り上げられた。ドラフト本番が近づくにつれて、改めて松井を1位候補として表明する球団がある一方で、九州共立大・大瀬良大地投手、JR東日本・吉田一将投手の名前も複数球団で挙がってきている。同時にこれまであまり伝わってこなかった松井の課題を指摘する声が聞こえてくるようになった。

 ある在京球団の投手コーチが言う。「いい素材であるのは間違いない」と前置きした上で「今のままではプロでは苦労すると思う」と続ける。松井は多くの三振をボール球のスライダーで奪っているが「見逃されるとボール。何度も対戦するプロではすぐに見極められるようになる。それにプロは高校野球と比べるとストライクゾーンが狭い。チェンジアップを投げるようになったみたいだけど、まだ微妙なコントロールはない。スライダーを見極められるとしんどい」と予測する。実際、今夏の神奈川大会・準々決勝では横浜高にスライダーの見極めを徹底された。4番・高浜に抜けたチェンジアップ、3番・浅間には直球を被弾し、10三振を奪いながら8安打3失点で敗れた。174センチ、75キロというプロの世界では決して大きくない体格も気になる点の一つに挙げている。

 あるパ・リーグのスカウトは「実はスカウトの中でも評価が分かれている」と明かす。「1年目から10勝した藤浪(阪神)のような活躍を求めると厳しい」として、本当の即戦力投手を望む球団であれば、1位指名は避けるべきとの個人的見解を示す。理由として、野手出身の同スカウトは「コントロールがあまりよくないし、ストレートで空振りをとれない」と打者目線で決め球がボールになるスライダー中心の配球を不安視する。

 日本代表のエースとして準優勝に貢献した、台湾での18Uワールドカップに帯同した高校野球関係者の話も紹介する。「スライダーのキレとストレートの球質などは、高校生でこんなすごい球を投げるんだと正直驚きました」と近くで見た松井の第一印象を振り返る。ただ、現時点での課題についても「細かいコントロールがない。チェンジアップもそれほど精度が高くない。クイックやバント処理も苦手なようだし」と次々と指摘する。あと「野球に対する考え方や姿勢は同じドラフト候補では森君(大阪桐蔭)の方が上。松井君はすばらしい能力があるのは間違いないが、考え方や意識がまだ物足りない部分を感じた」と口にする。

 松井を絶賛するスカウトも課題が多いことには同意する。セ・リーグの投手出身スカウトは同じ投手目線で見て「1球1球全力投球する力投型のスタイルや右足が突っ張るフォームも含めて課題はいろいろあるが、それはまだのびしろがあるということ」と説明する。課題を克服していけば、さらに大化けする可能性を秘めていると見ている。体格についても、長身がアドバンテージになるのは間違いないが、工藤公康のように170センチ台で成功した高卒左腕も存在する例を挙げる。

 松井はすでに12球団OKの姿勢を打ち出している。素材不足が叫ばれる今年のドラフト当日、最終的に何球団が競合するのかも注目だ。ドラフト後は指名あいさつに始まり、仮契約、入団発表、年が明けると入寮、合同自主トレ、キャンプ、オープン戦とこれまで以上にメディアやファンの目から逃れることができなくなる。その中で結果を残さなければならない。単なる野球の技術以外にもさまざまな力が問われる。

 過去のドラフト目玉選手のプロでの成功例、失敗例が示すように、入団したチームや直接指導する投手コーチとの相性も成長途上の松井の今後には大きく影響することになる。松井が「小さいころから夢を持ち続けていた」というプロ野球選手として名を残すことがきるのか。まずはどこの球団が交渉権を獲得することになるのか。運命の日は10月24日である。

(デイリースポーツ・斉藤章平)

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