阪神・近本「青春」はすごい人生の土台になる 甲子園に出られなくても人間関係の中で野球を楽しむことができたら
阪神の近本光司外野手(31)がデイリースポーツ読者に向け綴るコラム「余韻」。2026年の第1回はシーズン開幕を目前に、今季テーマにする「野球を楽しむ」極意を語る。“チカ・マインド”にあるのは職業「プロ野球選手」という責任、使命。「青春」の2文字をキーワードに野球少年や少女、多くのファンに元気、勇気を届ける活躍を誓う。また初球打ちにヒントを得た2、3月の実戦についても解説した。
近本は3、4月に求める数字を「精神安定剤」と言う。シーズンは6カ月間の長丁場。一定の数字を求める背景には、メンタルスポーツと言われる野球の仕組みがある。
「4月の一カ月と8、9月の一カ月では同じ打率でも、その期間の変動が4月は大きい。例えば3本ヒットを打てば一気に打率が上がるし、一本も打てなかったら一気に下がるじゃないですか。でも8、9月は打っても2厘とか3厘しか上がらないし、打てなくても1厘2厘しか下がらない。その差がすごく大きいんですよ。そこのメンタルは野球選手である以上、気にしないというのは絶対に無理なのでね」
143試合を戦うプロならではの境地。数字を語り、現在地を語る近本はどこまでも楽しそうだ。谷を知り、山を登った経験があるからだろう。ただ、楽しむことは簡単そうでいて難しい。取材当日、甲子園球場ではセンバツ大会が開幕していた。球児が野球を楽しむには-そんな問いには意外な答えが返ってきた。
「やっぱり『青春』じゃないですか。僕、青春はすごいな、いい期間だと思っているんです。あの期間にしかできないことは多い。人との付き合い方、心境の変化に気づけているかどうかが、これからの人生の土台になっていく。コロコロと流行も人間関係も変わっていく中で、そこで自分を見失わないように、自分自身を理解しておくこと。人に合わせるということも自分を理解することだし、人に合わせないことも自分で理解することが大切。甲子園に出られなくても人間関係の中で野球を楽しむことができたら。僕、寮生だったので、洗濯物を干してすぐに素振りをしたなとか、チームメートと結構、今でもそういう話をします。昔話をしたところで何も変わらないですけど、人生ってそんなものじゃないですか」
隣接するクラブハウスまで届く歓声、甲高いブラスバンドの音色。野球を楽しむ原点は、プロ選手の近本も、甲子園を目指す球児も変わらない。野球を楽しむために技術の向上を目指す日々。打撃でも常に変化を求める中で「やっぱりタイミングが大事だと、改めて感じましたね」と話す。
「今年もそうですけどやりたいことや、オープン戦だからこそチャレンジできることがある。ただ、やっぱりタイミングが合っていないと、やりたいこともできないし、できたかどうかのフィードバックも取れない。その中でやってみたら面白いんじゃないかというのを理解して取り組む。その結果、良い面も悪い面も出てくるので、それをどう天秤(てんびん)にかけて取っていくか。そう考えるとワクワクしますよね」
オープン戦だからこそのチャレンジがあった。2月22日・ヤクルト戦の初回、近本は奥川の初球をスイング。投手の足元を抜ける遊撃内野安打で出塁した。翌23日の日本ハム戦でも初回、達の初球を狙い右前打を放つ。奥川の投じた一球は見送ればボール気味。それでもスイングを仕掛けた。
「2月から、3月上旬に取り組んでいたことは、シーズンに入ったらプレーボールの初球をそんなにスイングしにいけないから、今のうちにしておこうという考えでした。最近は、そのスイングにいっている中で、変化球だったら勝手に止まるだろうし、真っすぐだったらそのままスイングしていく。その時に力んでしまうので、その力みをどう自分の中で閉じ込めながら、外に出ないで自分の中でしっかりスイングできるか、というのを初球からやってみようと思っています」
開幕を目前に控える中で、頭と体を連動させる作業。初球打ちでも時期によって意味が違う。ただ、2月のオープン戦から継続してきた中で「見えてきたものはたくさんあります」とうなずく。
「やっぱりタイミングだなと。しっかりと合わせにいって、合っていたら勝手に振っているものなので。あまり自分から振るというのを意識し過ぎなくてもいいのかなというイメージ。シーズンではできないようなこともありますし、逆にシーズンでも続けていきたいこともあった。それが開幕戦のプレーボールで、竹丸くんの初球をスイングしにいくかと言われると、それはまだ分からないですけどね。あの環境では絶対に力むので、そこをどうコントロールしていくかですね」
開幕は3月27日・巨人戦。「オープン戦が終わってからの4日間の練習、そこの過ごし方がすごく大事になる」と気を引き締める。昨季王者として迎える新シーズン。球団としても2リーグ制導入後、初の連覇に挑む戦いになる。前回、挑戦権を得た24年はリーグ2位。苦い経験も知る男が今、考える戦い方とは。
「他の人がどう思っているか全然分かりませんが、僕自身はそんなに連覇、連覇と気にしなくても、自分たちの仕事がしっかりできれば勝てると思っています。連覇とか、優勝というのは、あまり気にしなくてもいいんじゃないかと。それは24年に感じました。結果的に連覇はできなかった。だから何か違うものに取り組まないといけないというのもあるんでしょうけど、結局、自分が良いパフォーマンスを発揮できるのは、優勝とかタイトルとか成績を気にしないで、今できることにしっかりフォーカスして取り組む時。あくまで選手は自分のプレー、自分の成績が良くなればいいかなと思っています」
藤川監督は「強いから勝つではなく、勝つから強い。勝つチームをつくる」と言う。個々のスキルを磨いた先に、チームの戦力アップがある。
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