阪神・高寺 九回2死から起死回生の同点プロ1号 「やるしかないと思ってたので」3年ぶりスタメンで離脱の小幡の穴埋めた

 「DeNA1-1阪神」(13日、ハードオフエコスタジアム新潟)

 3年ぶりにつかんだ今季初スタメンで大仕事をやってのけた。阪神・高寺望夢内野手(22)が九回2死の土壇場で、右翼席へプロ初本塁打となる同点の1号ソロ。遊撃の守備では2度の併殺を完成させ、五、七回には確実に犠打を決めるなど、ケガで戦列を離れた小幡の穴をきっちり埋めた。

 新潟の夜空に虎の希望となる夢のアーチを描いた。あと1アウトで敗戦。そんな土壇場の状況をひと振りで変えたのは、3年ぶりの先発出場となった高寺だった。「もうやるしかないと思ってたので」。小幡の離脱で巡ったこれ以上ないチャンス。手放したくない。これまでの悔しさをバットにぶつけた。

 0-1の九回2死。1ボールから入江の真っすぐに無我夢中でスイングした。「いったとかは思わなかった」。がむしゃらに走り出す。弾丸ライナーは右翼へと飛び、ボールはグラウンドへと戻ってきたが、それはスタンドインからの跳ね返りだった。

 本塁打と分かると、二塁上でガッツポーズ。喜びすぎて転びそうにもなった。三塁内野席に座っていた母・智江さんの前で笑顔の雄たけび。ベンチ前では先輩たちから頭をたたかれ、最後は今までの思いを吐き出すように「よっしゃ!」と叫んだ。

 ここ2年は1軍での出番がなかった。2軍での数字が良くても「全然ダメです」。上の舞台へと上がるためには、圧倒的な結果を残さなければいけないことは理解していた。人のことは気にしないタイプ。自分を追い込むため、モチベーションはファームでタイトルを取ることだった。

 「最多安打を取るって自分で決めて、やり遂げようと思ったんです」。結果的には2位に18本差の大差をつけたが、序盤は僅差の争い。「取れたことで自信にもなった」。1本ずつの積み重ねが1軍でも戦える土台となった。

 昨オフ、慕っていた1歳上の遠藤が戦力外通告を受けた。涙を流す先輩と抱き合ったが、今年は同じ高卒5年目となった。帰省先で毎年恒例の初詣。いつもと違ったのは人生で初めて絵馬に願いを書いたことだった。強く記した「開幕1軍」。神にもすがりたい思いだった。「一段とやらなきゃって覚悟を感じた」と智江さん。普段、なかなか具体的な目標を明かさない男の覚悟の証しだった。

 遊撃の守備も無難にこなした。犠打も2つ決めた。求められる役割はこういうところ。でも、周りから「不思議。天才」と言われるゆえんは、ここぞの場面でとんでもないことをやってのけるから。チームを負けさせなかった。もちろん、ここからがスタートだと分かっている。「もっと打てるように頑張りたい」。記念球は実家に贈る。1軍での活躍も、家族への恩返しも、まだまだこれからだ。一歩ずつ、望み続けた夢をかなえていく。

 ◆高寺望夢(たかてら・のぞむ)2002年10月17日生まれ、22歳。長野県出身。178センチ、76キロ。右投げ左打ち。内野手。上田西高から20年度ドラフトで7位指名され阪神入団。22年6月のソフトバンク戦で1軍初出場。23、24年は1軍出場なし。24年は2軍で123試合出場、打率・288、0本塁打、35打点。124安打でウエスタン最多安打を記録した。

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