阪神のエース青柳 原点は恩師との“真剣勝負” あえて直さなかったクオータースロー

 「阪神6-3DeNA」(31日、京セラドーム大阪)

 自身初の開幕投手を務めて今季初勝利を挙げた阪神・青柳晃洋投手(29)に、約5年間指導した平岡昭彦さん(62)からエールが届いた。右腕が小学4年冬から所属した「寺尾ドルフィンズ」のコーチ、生麦中野球部の外部コーチを務め、プロを志すきっかけとなった存在。クオータースロー誕生の秘話や、プロ入り後も続く師弟関係について明かした。

  ◇  ◇

 独特の軌道で放たれる白球に、バットが空を切る。アウト!平岡コーチは言った。「このまま行けば、おまえはプロにいける」。後に虎のエースを背負う男の、原点だ。

 中学卒業前に実現した恩師との“真剣勝負”。青柳が当時を振り返る。「エース、2番手も対戦したんですけど、打たれて。僕だけが抑えたんです」。高校進学にあたり、野球を続けるか悩んでいた右腕の背中を押した。

 一方で、平岡さんが明かす。「打ち取られたから言ったのもありますけど、本当に打ちづらかった。本人は3番手と言ってますよね。でも、3年の春にサッカーの授業で足を骨折して、それでエースがとれなかったというだけで。顧問の先生と『あぁ、エースだ』と話してたんですよ」

 野球に対するひたむきな姿勢にも可能性を感じさせた。自身との約束を守り、投球練習以外は黙々と走り込みに徹した青柳。平岡さんは「他の子とは少し違ってた。言ったことはやるような子でしたね。周りも認めていきました」と回顧する。

 運命だったのかもしれない。初めてキャッチボールを見た冬、小学4年生の少年がやってみせたのは、スリークオーターより下手気味の投法だった。誰かに教わったわけではない、青柳にとってごく自然な姿。最初は矯正を試みたが、なかなか直らない。「肩に負担がないなら、そのままいこう」。2人で決めた唯一無二の武器だ。

 変則投手。そう呼ばれることが多いが、平岡さんの考え方は少し違う。「自分はサイドもアンダーも、変則投手とは思わないんです。その子の持った力を本当に出せる投げ方だと思って教えてたので」。ただ、精神面の助言は厳しく伝えた。

 「あの投げ方は弱気に見えたらダメ。打者目線で思ったことを愚痴るみたいに言うと、次の週には変わっていましたね」

 そんな関係は今でも変わらない。LINEで近況を報告し合い、コロナ禍以前のオフは毎年酒を酌み交わした。「飲んでても、えらそうにするわけでもないし、いつまででも『コーチ』と呼んでくれる。向こうの方がもう全部分かってるだろうに、ダメ出しをえらそうにしますけどね(笑)『できるように頑張ります』って言ってくれるんです」と笑う。

 昨季は投手3冠。球界屈指の好投手へと成長した教え子に、エールを送る。「正直言うと、子どもの頃から調子に乗るとダメになる。それが心配になっちゃうんですよね(笑)。ずっと初心の気持ちでいてほしい」-。

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